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「私は3Dプリンターが嫌いです!」

カリスマ教授が過熱するブームに警鐘を鳴らすワケ

2013年5月7日(火)

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 先日、あるイベントの基調講演のことでした。

 「私は3Dプリンターが嫌いです」

 こう切り出したのは、マサチューセッツ工科大学(MIT)教授で同ビット・アンド・アトムズ・センター所長のニール・ガーシェンフェルド氏。FabLab(ファブラボ)のグローバルネットワーク創始者と言われるとても著名な方で、知っている方も多いのではないでしょうか。

ニール・ガーシェンフェルド氏

 FabLabとは、3Dプリンターやレーザーカッター、NC工作機械(コンピュータ数値制御による工作機械)などを備えた一般の市民のための工房と、それら各地の工房をつなぐネットワーク。「Fab」には「Fabrication(ものづくり)」と「Fabulous(愉快な、素晴らしい)」という2つの意味が込められているそうです。次世代のものづくりのムーブメント(メーカームーブメントなどと呼ばれることが多いようです)としてネットやメディアなどでよく見聞きする単語として、気になっていた方も多いのではないかと思います。FabLabについては、FabLab JapanのWebサイトで、その成り立ちや活動について紹介されています。

 彼の著書「ものづくり革命 パーソナル・ファブリケーションの夜明け」(ソフトバンククリエイティブ)は、既に絶版になってしまったようですが、最近になって「Fab―パーソナルコンピュータからパーソナルファブリケーションへ」(オライリージャパン)が出版されました。Fabに興味がある方はもちろん、今のメーカームーブメントや3Dプリンターブームを予見した著書として、一読されることをおすすめします。もっと手っ取り早く、FabLabについて知りたい方は、ニール・ガーシェンフェルド氏の「TED GLOBAL」での講演の模様が日本語字幕付きで「TED Talks」で公開されています。こちらをご覧になるとより理解できるかもしれません。

3Dプリンターブームにはうんざり

 話は戻りますが、ニール・ガーシェンフェルド氏は、MITで“how to make almost anything(ほぼ、なんでも作る方法)”という名物講義を担当するカリスマ的な教授。今、まさにブームとも言える、3Dプリンターによるデジタルファブリケーション(デジタルを媒介にしたものづくり)や、個人で誰でもものづくりをするというパーソナライゼーションを推進している第一人者です。その彼が、なぜ「私は3Dプリンターは嫌いです」という発言をしたのでしょうか。

 同時通訳ではそう訳していましたが、「I don't like too much…」と言っていたと記憶していますので、実際には「3Dプリンターはあまり好きではない」というニュアンスでしょうか。いずれにせよ、このような発言をした背景には、ネットやメディアによる3Dプリンターの報道が期待以上に過熱していることに対して、彼なりの皮肉と本質をもっと知ってほしいという意図があったと想像できます。

 講演では、「最近は3Dプリンターの質問ばかりで、ちょっとうんざりしている…」というような話もされていたのが印象的でしたね。実は、このイベントで私も登壇していたため、控え室で彼と挨拶をする機会がありましたが、3Dプリンターブームの過熱ぶりは、米国も日本以上に行き過ぎていると苦笑をしていました。

 私もここ数カ月は、TVをはじめとする様々なメディアの取材を受けましたが、たしかにうんざりするほど3Dプリンターの質問をされました。それも「3Dプリンターの登場で、日本のものづくりは危機に陥りますか?」とか「3Dプリンターによる新産業革命をどう思いますか?」とか。次第に、「3Dプリンターは魔法の箱」という表現が、本当に嫌いなりました(3Dプリンターを販売している会社を経営している者としてはちょっと問題かもしれませんが)。

 もちろん彼も、本気で3Dプリンターが嫌いということではないでしょうし、実際、MITの工房でも3Dプリンターを利用しています。彼が言いたかったのは、3Dプリンターは道具のひとつに過ぎず、デジタルファブリケーションによるものづくりのハードルの低下(民主化)による新たな潮流について、もっと広い視野で見て欲しいということだったと理解しています。

コメント7件コメント/レビュー

全くの素人の私にとって、「年賀状がパソコンで印刷できるようになったけど、絵柄はネットで拾ってくるしかない現状」と一緒か、と認識しました。(2013/05/10)

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「「私は3Dプリンターが嫌いです!」」の著者

原 雄司

原 雄司(はら・ゆうじ)

ケイズデザインラボ社長

2006年に『アナログとデジタル融合で世界を変える!』を標榜しケイズデザインラボ設立。ものづくりからデザイン、アート、医療、エンターテインメントまで、様々な分野での3Dデジタルものづくりの活用を提案。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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記事のレビュー・コメント

いただいたコメント

全くの素人の私にとって、「年賀状がパソコンで印刷できるようになったけど、絵柄はネットで拾ってくるしかない現状」と一緒か、と認識しました。(2013/05/10)

原様のご認識に同感です。20年以上前に同じ研究所の他部門でレーザー光で樹脂を固める方式の三次元造形機(当時はプリンターとは呼んでいなかった)の研究をしていたのを覚えていますが、その時はモックアップ作製には使えるかなと思ったぐらいで私の頭から消えていました。最近、TVで特集番組を見て脚光を浴びていることに仰天しました。製造業に革命をもたらすだの、日本の製造業を脅かすだのの大騒ぎにです。100個の量産と1万個以上の量産は造り方が違いますが、量産には変わりはありません。コストを下げるための量産のはずです。3Dプリンターにそれが出来るのかが大きな課題だと思います。アーティストや個人の手芸の用途では無いでしょうか。年賀状を干支の3次元データを添付して送るなど一家に一台の時代があるかもしれません。しかし、3Dカラープリンターの時代です。私の仰天した他の理由は、この3Dプリンターが日本発では無く、またしても米国発だった事です。全く異なった次元でアベノミクスの限界を見たような気がします。(元通信技術者 62歳)(2013/05/07)

インターネットの普及が始まった時期とダブって見えます。新し物好きな層は革新的な世界の到来を叫び、一般大衆は、その意味すら理解できず、パソコン通信時代からのマニアは冷やかに斜めに見る。そんな構図がものづくり環境の進化にも重なって見えるようです。古くから知る人にとって3Dプリンタは魔法の箱ではないかもしれないが、玄人が想像もできない新しい未来の形が、古い時代を知らない世代の視線の先には見えているのかもしれません。これまで専門家だった世代が、これからも時代の先端をゆくとは限らないのでしょう。3Dプリンターも、造形ソフトウエアも、支援サービスなどの環境も、あっという間に大きく進化してしまうのでしょう。後に振り返ってみて初めて今がその転換期だったことが分かる、といった具合に、徐々にではあれ素材を入れると料理が出来上がる電子レンジが実現する時代が来たように、思い描いたものが目の前で形になる時代が来ることを楽しみにしています。(2013/05/07)

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