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CSRという新規事業のインキュベーション

企業価値を向上させる環境/CSRコミュニケーション[3]CSV

  • 外薗 祐理子

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2013年5月14日(火)

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 自社が環境やCSRに真剣に取り組んでいることを、単なる社会貢献ではなく、本業の価値を増大させることにつなげたい――。そう考える企業人のためのコミュニケーション講座の第3回。米ハーバードビジネススクールのマイケル・ポーター教授が提唱するCSV(共通価値の創造)。東日本大震災の復興との関連もあって日本でも注目を集める。CSVの関連でCSRの位置づけにも変化が起こり始めている。

 大型連休初日の4月27日14時、山口湾に流入する椹野川(ふしのがわ)河口干潟に、老若男女230人超が集まっていた。この干潟は、シベリアやカムチャッカから日本列島を縦断して東南アジアに向かう渡り鳥と、モンゴルや中国から朝鮮半島を経由して四国に横断する野鳥が行き交い、日本の重要湿地500にも選ばれているという。絶滅危惧種であるカブトガニの生息地でもある。

 だが、実際にその地を訪れると、そうした言葉から連想するような豊かな水辺の景色はない。地面はまるで工作機械で踏みしめられたように黒々と固く、目を凝らさなければ生き物の姿は見当たらない。

 椹野川河口干潟はかつてアサリやクルマエビの好漁場だったというが、人口増加や生活排水対策の遅れなどの影響で、1985年ごろから漁獲量が年々減少している。中でも、アサリは壊滅状態といい、環境省のウェブサイトによれば、75年に653tあった山口市の採貝漁獲量は、91年以降はほとんど漁獲されていない。今ではここで潮干狩りを楽しむ人はいないという。

 老若男女は、干潟の再生のために集まっていた。地元の農協の女性たち、県内の大学生、山口市内に住む若い家族連れ…。バックグラウンドも様々な人たちが干潟再生のための地域のNPOの指導のもと、長靴を履き、スコップを持ち、およそ2時間、干潟を耕す。その間、子どもが走り回り、あちらこちらから笑い声が響いていた。

 これが自動車のマーケティング活動だと言われて、すんなりと納得できる読者は少ないかもしれない。イベント名は「アクアソーシャルフェス」。トヨタ自動車が2011年12月末に発売した新型ハイブリッド車「アクア」の販促活動の一環だ。

 アクアの1リットル当たり35.4km(JC08モード)という世界最高の燃費水準や、一番リーズナブルな車種は169万円という低価格が受け、2012年度の販売台数は28万2660台と、車名別の新車販売台数で3年連続1位だった「プリウス」を抜いて初の首位となった。昨年、日本で最も売れたクルマということになる。

 トヨタの国内での広告宣伝や販促活動を行うトヨタマーケティングジャパン(TMJ)は、アクアのマーケティングとして、短期と中長期の2つのマーケティング戦略を開発した。短期戦略はマス媒体への集中的な広告出稿をして、「世界トップの低燃費」などの商品特性に関する認知度を一気に高めるというものだ。発売後わずか1カ月で受注台数が12万台に達する原動力となった。

 一方、中長期の視点に立ったマーケティングの一環が、「アクアソーシャルフェス」である。車名にちなんで、水をテーマにした環境保全・保護活動を全国50カ所で実施するというもの。地方紙や地域のNPOなどと組んで、2012年の1年間ではプログラムを131回実施し、1万人が参加した。若年層の参加率が高く、30代以下が6割以上を占める。

 販促活動といっても、実際のフェスでは、「アクア」や「トヨタ」はあまり表に出てこない。会場内をアクアの実車が走り、参加者には車名の入った軍手や小冊子が配られるのみだ。「環境保全活動をすることで、共感を得ることが目的」とTMJ・マーケティング局の折戸弘一・マーケティングディレクターは話す。アクアソーシャルフェスは、車に関心のない若年層に「社会貢献参加意欲が高い」「社会貢献ブランドへの行為や共感が高い」といった傾向があるというマーケティング上のインサイト(洞察)から生まれた。

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