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「お姫さま」のように扱われてフグはおいしくなる

三重・安乗「あのりふぐ」のブランド化戦略

2013年7月4日(木)

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安乗で水揚げされたフグ

 三重県志摩市に安乗(あのり)という人口2000人弱の小さな集落がある。

 伊勢志摩国立公園の中にあり、周辺に鳥羽、伊勢、志摩、熊野といった全国から人が集まる大観光地がある。しかし安乗には安乗埼灯台という小さな観光地がある程度で、民宿や旅館などの宿泊施設もわずかにあるだけである。昼食を提供する飲食店もほとんどなく、安乗をわざわざ訪れる観光客はほとんどいなかった。

 安乗は背後に紀伊山地が迫っており、リアス式海岸の美しい景観を持つ。大小の河川からミネラル成分を多く含む栄養豊かな水が伊勢湾に流れ込む。志摩半島の先端に位置し、北、南、東のいずれも海に面し、伊勢湾と多くの魚が回遊する太平洋の黒潮が交差するところに位置している。

 太平洋から伊勢湾に向かって海底地形は起伏に富み、安乗の沖は豊かな漁場になっている。安乗漁港では、春から夏にかけてアジやサバ、イサキなどが、秋から冬にかけてはトラフグや伊勢エビが獲れる。特に近年、注目を集めるようになったのが天然のトラフグである。この地域が日本国内でも数少ない産卵場所の1つであることが分かり、栄養分豊富な海が育んだアジやイワシを餌にして育ったその味がプロの料理人から高い評価を得るようになった。

 魚のおいしさを決めるのは鮮度であると多くの人が信じている。そのため、店内に水槽を作って魚を泳がせ、客の注文に応じて魚を取り上げて調理する飲食店も多い。しかし、狭い水槽の中で泳いでいる魚にはストレスが蓄積する。また、水槽の中で魚同士がぶつかり、噛み合うこともある。魚は傷つき、そこから細菌が繁殖し、腐敗を早めてしまう。

 獲った魚をどのように締めるかによっても魚の味は変わる。また、大きな船を使い、網で大量に魚を獲れば、どうしても魚に傷がついたり、つぶれたりする。こうなると魚は内出血を起こした状態となり、体内に血が回って腐敗のスピードが速まる。腐敗が進むと、食べるときにどうしても臭みが出る。

 これはつまり、獲ってからの時間や捌いてからの時間だけが魚のおいしさを決めるのではないということを意味する。低温の海水で生きている魚にとって、人間の手の温度はあまりにも高すぎる。直接触ると、それだけで腐敗のスピードが変わるという。魚の味は、個体差も大きく影響するが、それ以上に流通プロセスにおける作業方法の違いが大きく影響するのである。

 だから、安乗では今やブランドとなっているトラフグの取り扱いに細心の注意を払っている。主に安乗漁港で水揚げされる海産物の仲買卸と加工、および三重県内で地元の海産物を使った飲食店を多店舗展開している丸勢水産。同社の片山勝仁社長は魚を「お姫様のように扱う」と話す。

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「「お姫さま」のように扱われてフグはおいしくなる」の著者

内藤 耕

内藤 耕(ないとう・こう)

サービス産業革新推進機構代表理事

世界銀行グループ、独立行政法人産業技術総合研究所サービス工学研究センターを経て現職。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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