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変わる農協、躍進法人と「和解の日」

共存で本来の役割を取り戻せるか

2013年9月27日(金)

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 「大罪」となじられたり、「戦争」と敵視されたり――。農協と言うと、まるで日本の農業をダメにした張本人かのように批判されることが少なくない。だが高齢化による離農と耕作放棄の増大という危機を前に、変革をさぐる動きもある。躍進する農業法人と手を組むという新しい試みも出始めたのだ。

 「本当のことを言うと、農協から早く話が来ないかと期待していた」。中部地方でコメをつくるある農業法人のトップはこう語る。「販売は自由にしていいから、貯蔵施設を使ってほしい」。これが今春、農協から来た提案だった。

 仮にこの法人の社長の名前を「稲田」としよう。稲田はいまから約10年前、わずか1ヘクタールの田んぼで稲作を始めた。はじめは農協に頼んでコメを売ってみた。だが値段も売り先も農協にまかせ、あとは放っておくだけの手法では「なんの面白みも感じなかった」。

 「自分で売ってみよう」。そう決めた稲田は農協とたもとを分かち、米袋を担いで飲食店を回る日々が始まった。そのころはまったく無名で、親戚や知人に買ってもらうのが精いっぱいだった。いまは都心の高級百貨店にコメが並ぶ稲田だが、「作るより、売るほうがずっと大変だった」と当時をふり返る。

 飛躍のきっかけはコシヒカリと違う品種を植えてみたことだった。当時もいまも日本のコメはコシヒカリかその関係種ばかりだが、稲田は味も香りも大きさも違うべつの品種をつくってみた。これが稲田のいる地域の気候に見事に当たった。コメの食味コンテストに挑戦すると、幾度もトップに輝いた。

農協が施設利用のみを認める異例の措置

 これで流れは一気に稲田に傾いた。近くの農家が「田んぼを借りてくれ」と言ってくるようになったのだ。ご多分に漏れず、稲田の周囲の農家も年をとり、農作業を続けるのが難しくなっていた。稲田はまだ50代前半。農家としては「将来のある担い手」の部類に入る。稲田のほうも注文に応えるには、狭い面積では足りなくなってきていた。

 こうして耕作面積は40ヘクタールに迫るほどになった。しかも、それでも足りず、数十人の農家が稲田のグループに入った。もちろん稲田との契約でつくるコメの販売は農協を通さない。稲田が農家から集荷し、独自ルートで売る。

 「施設の利用率が落ちて困っている。販売はべつでいいから、施設を使って欲しい」。農協が稲田にこう話を持ちかけた背景には、地元の農家が次々に距離をおき始めたという事情がある。コメ農家の悩みはどこも収益の低迷。高値で売れるブランド化に成功し、伸び盛りの稲田のもとに集まるのは当然だろう。

 一方の稲田にも、農協の提案に飛びつきたい理由があった。コメを売る際に欠かせないのが、モミを外して玄米にし、精米し、袋詰めにするまでの一連の作業。その過程で、年1作のコメには貯蔵のための施設が必要になる。農協から独立した稲田はそのための設備投資を重荷に感じ始めていた。農協からの誘いはまさに渡りに船だったわけだ。

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「変わる農協、躍進法人と「和解の日」」の著者

吉田 忠則

吉田 忠則(よしだ・ただのり)

日本経済新聞社編集委員

1989年京大卒、同年日本経済新聞社入社。流通、農政、行政改革、保険会社、中国経済などの取材を経て2007年より現職。2003年に「生保予定利率下げ問題」の一連の報道で新聞協会賞受賞。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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手嶋 龍一 作家・ジャーナリスト