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「博多のネオン街をオフィスに持ち込もう」

人々の「心の動線」を刺激する

2013年10月21日(月)

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 まずは写真を見ていただきたい。複数のモニターのようなものが集合したボードである。私は1年前に初めてこの写真だけを見たとき、正直言って3秒で興味を無くした。一時期マーケティングの新潮流だと大袈裟にもてはやされたデジタルサイネージと勘違いしたからだ。

 この装置は「エナジーウォール」と呼ばれる。組織内の情報を集めて見せているうちに、組織や社員が自然と活性化されていくという。用途は様々だが、写真の例では各部門のお国自慢ならぬ「組織自慢」に使っている。各部門が自分たちの部門の自慢話を提供し合う「よろず情報掲示板」とでも言えよう。

 説明者は装置の効用をこう述べた。例えば、表向きは総合力をうたいながら、中に入るとそれぞれの組織がサイロ状態になっている企業があったとする。こうした企業にエナジーウォールを導入すれば、部門間で情報の共有を促進でき、お互いの垣根を低くできるという。

 しかし、それにはさらに疑問を覚えた。情報の共有化は使う人には天国、情報を入力する人には地獄、となりかねない。本社スタッフから「情報を出してください」と依頼され、忙しい中いやいや情報を提供する。ありがちな光景だ。こうした情報に迫力や魅力は期待できない。極力リスクを減らしたカドのとれた平凡かつ、おざなりの情報が提示されてしまう。

 しかも、この掲示板を企業の広報のためにも使うという。企業の広報と聞いただけで、多くの人は無味乾燥な「通達情報」を想像するだろう。企業における広報とは、企業で起きていることを正しく伝えるファンクションだからだ。

 「正しく」という言葉は厄介で、どうしても「リスク無く」という言葉と同意になってしまいがちだ。誤解を恐れずに言えば、広報からの情報は大変にセンシティブで重要である反面、広報という言葉を聞いただけで人は退屈を連想してしまう。

 鳴り物入りで始められた情報の見える化や情報発信サービスは日々、陳腐化し、最後にモニターのお化けのようなハードウエアの残骸がオフィスの中の一等地に残るわけだ。

自慢大会ボードに込められた「ものがたり」

 ところがどっこい、私の悲観的予想は、その説明を聞き始めてから1分後に、もろくも崩れ去った。エナジーウォールは情報公開や情報共有化をせざるを得ないように、社員を楽しく追い込む仕組みだった。前回記事「屋台の熱狂とワクワク感。これが必要だった」で触れた「熱狂」を社員の間に生み出すことを狙っている。

 エナジーウォールは大小複数の画面に分割される。企業のそれぞれの部門に対し情報公開スペースとして画面が一つ割り当てられる。各部門の社内広報担当者はその画面を通じてコンテンツを発信する。ここまではよくあるマルチ画面のサイネージと同じだ。

 大きく違うのは、それぞれの画面のコンテンツが社内SNS(ソーシャルネットワークサービス)で評価されており、「いいね」のクリック回数に応じて位置や画面サイズが変わるということ。自部門の情報の評価が高ければ高いほど、位置は中央付近に、さらにはより大きな画面へと「出世」していける。

 ここまで説明されたとき、私は「サラリーマン社会の悲喜劇」を楽しく連想した。例えば、読者の皆様が自部門のコンテンツ責任者であるとしよう。ある日、あなたとあなたの上司である部門責任者は社内にあるウォールの前を通りかかる。

 ひょっとして上司から、自分の組織が今どこにいるか、社内でライバル関係にある部門はどこか、真ん中で一番大きな画面の部門はどこか、など聞かれるのではないか。あなたにとってヒヤヒヤする経験である。

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「「博多のネオン街をオフィスに持ち込もう」」の著者

金巻 龍一

金巻 龍一(かねまき・りゅういち)

GCA マネージングディレクター

M&Aアドバイザリーの一環として、日本企業のグローバル化と成長戦略を「事業統合シナジーの創出」という観点から支援する。慶應義塾大学特別招聘教授。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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