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業務プロセス安定化に秘策はあるか?

業務はタイ人に依存する、その当たり前を忘れる日本人

2013年10月29日(火)

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 企業が顧客を創造し、利潤を追求するとき、その企業には「仕事」という名の活動と、それを遂行する「人材」、指揮命令のための「組織」、そして設備投資や運転の「資金」が不可欠となる。

 今回は、この中の「仕事」に焦点を当て、タイに設立した現地法人の業務プロセス[Business process]について考察する。

(撮影:加藤 耕介)

コンピュータ化された業務プロセス

 業務改革やBPR[Business Process Re-engineering]でなじみ深い(が、実のところは良く分かっていない)業務プロセスと言う言葉は、現代の企業では情報技術[Information Technology]と表裏一体の関係にある。

 新しく会社を設立すれば、規模に関係なく、購買から販売、製造、経理と一通りの業務《注1》を有することになるが、各業務から発生する伝票や仕訳を手作業で処理する会社は今やまれである。

《注1》 商習慣や法規制、生産形態、会計基準など、業種業態で業務内容(手続き)に違いが発生するものの、必要とする業務部門(販売・製造・購買・物流・会計)は一律に近い。システムから見た会社規模とは、伝票や仕訳などの取引件数と品目点数の違いでしかない。

 ほとんどの会社が、自社の規模に見合ったシステムを導入(又は委託)し、コンピュータ化された業務を駆使して企業活動を行う。

 海外進出でも同様に、現地法人の業務プロセスを設計する場合、システム運用を前提とするのが常であるが、そもそも現代の業務プロセスはどのような概念で構成され、またシステムはどの様な役割を担っているのか。本題に入る前に解き明かす必要がある。

情報技術と業務プロセスの変遷

 過去を振り返れば、1980年代における情報技術の役割は、いわゆる業務の電算化であった。

 増え続ける情報量に対して、データの処理精度を確保し高効率を実現するため、生産・販売・購買、そして会計と主要な業務を次々とシステム化した時代、企業における電算カンブリア紀である。

 それら各業務のシステム化にメドが立つと、次は個々のシステムをつなぎ合わせ、情報連携に注力するネットワーク黎明期が訪れる。社内システム相互で、購買先や納入先と、さらには海外の子会社間と情報連携が拡大の一途をたどり続けた時代であった。

 この時代までは、電算化の目的と手段(投資対効果)が明確であった一方で、工数削減など一定の定量効果が期待できれば、重箱の隅をつつく画面や帳票でさえも機能追加が認められ、乱立開発に明け暮れていた。

 企業システムは現状を肯定した業務中心アプローチ[Process Oriented Approach]《注2》の全盛期であり、“As-Is容認”の近代から抜けきれず、電算部門は疲弊していた。

《注2》 業務の手続きからシステムを設計する手法であり、IPO図の手続き[PROCEDURE]の要件を前提として必要なデータを都度定義する。実務に即したシステムとなる反面、データの重複保持などの非正規性や特有性から情報管理や他システムとの連携は煩雑になる。身近なイメージとしては(ちょっと値を変更するだけで崩壊する)センスのないEXCELシート。

 青天井の電算コストが予兆ではあったが、ERP[Enterprise Resource Planning]の出現が転機の決定打となる。

 増殖し続けるシステムに歯止めをかけるべく、IT部門(この頃に電算からITに名称を鞍替えする企業が続出した)は“あるべき業務”という漠然としたプロセスに実務を適応させることでコストダウンを策したのだ。俗にいうTo-Beモデルを前提としたシステム構築である。

 To-Beモデルには、データ中心アプローチ[Data Oriented Approach]《注3》という一世代前とは対極する手法が包含されている。

《注3》 業務で取り扱うデータからシステムを設計する手法であり、IPO図の入出力[INPUT/OUTPUT]からデータベースを定義した後にシステムを設計する。データは正規化されるので情報管理や他システムとの連携は優位になるが、データ制約から機能限界が発生するため業務に過負荷を強いることが多い。身近なイメージでは(決められたことはきっちり処理するが)杓子定規で融通が利かない役所や銀行の窓口。

 業務中心アプローチが実務に即したシステム構築だとすれば、データ中心アプローチは情報管理を主眼としたシステム構築であり、業務を定型プロセスにはめ込むことで、枝葉的な画面や帳票の開発を制限し、またデータの共通性を確立して情報連携の利便性を狙ったのだ。

 しかし、今までの至れり尽くせりなシステムとは異なり、何かと使い勝手の悪い、しかもIT部門のご都合主義が透けて見えるERPにユーザーが難色を示しだした。これ以上の不便は御免こうむると。

 この難局を乗り切るべく、IT部門はスポンサーであり指揮命令の長である経営者を味方にすることを画策した。その切り札として「計画系へのシステム進化」を高らかに提唱したが、これが自らの首を締め続けることになる。

 計画業務は、伝票や仕訳などの取引処理とは異なり、計画精度や予実評価を定量評価へ直接的に関連付けができないジレンマを抱えてしまう。つまりERP導入に対する投資対効果が見えないのだ。

 目的が明確でないシステム導入は雑音に弱い。ユーザーの旧態依然とした要求にも増して、経営者の移り気と迷いに困惑し翻弄され、コンサルタントと共に踊り、踊らされたERP混迷期である。

 踊り疲れた頃、降臨した救世主はSCM[Supply Chain Management]であった。計画と在庫を結びつけることで投資対効果を間接的に評価する方法《注4》を編み出し、ERP導入に躊躇していた企業を突き動かすことに成功する。

《注4》 販売計画の精度が高ければ、生産や購買は適正量になり過剰在庫が一掃される。余剰資産の減少は財務健全化には貢献するが、売上高には直結しない。それでも経営者が在庫削減に飛びついたのは、在庫減と株価高に相関があると言う統計レポートに魅了されたからである。

 だが皮肉なことに、在庫削減へと闇雲に邁進すれば、販売機会の損失や製品原価の上昇に直面することを思い知らされたのもSCMだった。自分たちの実力以上に在庫は減らせないと分かった今、企業はシステム指向の改革から業務能力の向上に舵を切った。

 結果、SCM景気は終焉し、長く果てしない暗黒のIT停滞期が現在まで続いている。

 それでも、一度走り出したデータ中心アプローチの流れは覆らない。なぜならば、どの企業も、グローバル企業であればなおさら、今や社内外との情報連携なしでは業務が回らないからだ。

 IT部門がその存在意義を見失おうとも、現代が“To-Be主導”であることに揺るぎはない。

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「業務プロセス安定化に秘策はあるか?」の著者

加藤 耕介

加藤 耕介(かとう・こうすけ)

ITストラテジスト/EBT代表

2輪車メーカー、コンサル業界を経て、空調メーカーにてグローバルSCM構築の中心的役割を果たす。タイの生産拠点をハブにした業務改革・IT導入を実施。「企業における業務改革の主治医」を志しEBT設立。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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