日経デジタルマーケティングは、『最新マーケティングの教科書』(ムック)を11月5日に発売した。このコラムでは、そのムックの中からマーケティングを理解するのに欠かせない最新のキーワードを解説していく。
エスノグラフィーとは、集団の内部に入り込み、長期間の観察やインタビューなどのフィールドワークを通して、豊かな定性情報を得るための手法である。
文化人類学者ブロニスワフ・マリノフスキが著した『西太平洋の遠洋航海者』(1922年)が起源と言われる。文化人類学や社会学において用いられてきたが、近年は企業活動への応用が進んでいる。

消費者などの行動を観察し、そこから得られた知見や洞察を製品やサービスの改善や新事業のアイデアに生かすなど、イノベーションを起こす手法として期待が高まっている。
エスノグラフィーが注目される理由の1つとして、「ユーザー中心の設計」(User Centered Design=UCD)と呼ばれるものが、デザインや開発において主流になってきたことが挙げられる。
真に「欲しいもの」を知る
製品ありきで、操作性などに利用者が慣れるように仕向けるのではなく、利用者が真に欲しいと思っているものを知り、より価値ある体験や経験を提供しようという動きである。
先進国などでは市場が成熟し、既存の製品やサービスと差異化することが難しくなっている。消費者が本質的に欲しているものは何か。それを問い直すことが求められており、エスノグラフィーは、それに資すると考えられているのだ。
エスノグラフィーは既存のアンケート調査やグループインタビューのように、まず仮説を立て、それを検証するのではなく、「仮説を構築するために行う調査」である。
既存の調査が「仮説検証型」とすれば、エスノグラフィーは「仮説発見型」だと言える。

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