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これまで見ていた深海は「ライオンのいないサバンナ」だった

深海生物研究者 藤原義弘(3)

2013年12月4日(水)

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鯨骨生物群集を研究する藤原義弘さんの最終回。前回は、ムール貝のようなイガイの仲間が深海の熱水噴出域で生きていけるようになったのは、進化の途中で海底に沈んだ大型動物の骨を「飛び石(ステッピング・ストーン)」にしたからというお話でした。しかし、イガイがそうした進化をとげたころ、まだクジラはこの世にいなかったのです!(写真=田中良知)

藤原義弘さん。

 クジラの骨は、地理的にも、そして進化的にも、ステッピング・ストーンたり得る。

 藤原義弘さんはそう考えているというのだが、その前提が根底からひっくり返りそうな事実があった。クジラの骨の周りを舞台に、今深海にいる一部の生物がその進化をしていたと思われる時代には、まだ、クジラの骨どころか、クジラ自体が存在していなかったというのだ。

 進化はしたが、それに欠かせない飛び石が、存在していなかったということになる。

 どうなってるんですか、藤原さん。

 「北海道で、首長竜の化石が見つかったことがあるんです」

クジラはいないが首長竜はいた

 首長竜とは、水の中で暮らしていた爬虫類。何千万年前、という単位での遠い昔、クジラの祖先が誕生するよりも前にいた生物だ。“海の恐竜”と言われて頭に思い浮かぶ、ネッシーライクな姿をしていたと考えられている。

 「その化石と一緒に、熱水噴出域や湧水域でしか見つかっていない貝の仲間の化石が見つかったんです」

 と、いうことは?

 「まだまだ事例が少ないので断定はできませんが、首長竜が、クジラの役割を果たしていたのではないかと考えています」

 首長竜の進化的ステッピング・ストーン仮説だ。確かに、深海生活に向けて進化しつつある生物は、鯨の骨の代わりに、首長竜の骨を活用していたと考えれば不思議はない。

 深海生物への進化には、首長竜やクジラの骨が必要。

 でも、首長竜やクジラの骨にいながら、進化しない生物もいる。

 「鯨骨生物群集のなかには、系統的に古い生物も多いんです。そういった生物は、もしかすると、首長竜などの骨にたどり着いたあとはその環境に留まり、首長竜が絶滅した後も鯨類の骨で細々と生き残ってきた動物たちかもしれません。それはいわば、進化の袋小路に閉じ込められた、“生きた化石”のようなものです」

JAMSTEC横須賀本部にある飼育室。サツマハオリムシ(右の水槽)など数々の深海生物を飼育している。

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「海の研究探検隊 JAMSTEC」のバックナンバー

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「これまで見ていた深海は「ライオンのいないサバンナ」だった」の著者

片瀬 京子

片瀬 京子(かたせ・きょうこ)

フリーライター

1972年生まれ。東京都出身。98年に大学院を修了後、出版社に入社。雑誌編集部に勤務の後、2009年からフリー。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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