南北いずれもが米中間での二股外交に動く――。複雑怪奇な様相を見せ始めた朝鮮半島を読者と読み解く。
米国から叱られた南
北朝鮮が韓国を「四面楚歌」と嘲笑った、ということですが(「北も南も二股外交」参照)。
鈴置:2013年12月13日の朝鮮中央通信です。同じ日に張成沢の死刑宣告と即時執行が発表されたので、ほとんど注目されませんでしたけれど。
北の対南宣伝組織である祖国平和統一委員会のスポークスマンが「南が四面楚歌に陥った」ことに関し記者の質問に答える、という形式の記事でした。要旨は以下です。
・先日、南朝鮮を訪問した米副大統領は朴槿恵に会い、対米追従を露骨に強要した。
・日本は首相まで登場し、傀儡(韓国の政権担当者)どもと一連の懸案で摩擦が起きていることを当てこすって、愚かだの何だのと非難嘲笑、朴槿恵に対しても「悪態をつくおばさん」と手ひどく嘲弄した。
・傀儡一味は「信頼外交」だの「(米中間での)均衡外交」だのと浮かれていたが、執権1年もたたぬうちに周辺国から冷遇と嘲笑の対象となり、果ては「誰の側に立つのか」と二者択一を強要される境遇に陥った。
・南朝鮮のメディアは「明成皇后(閔妃)が列強の勢力争いに巻き込まれ、引きずり回された時が再現された」と慨嘆した。
・ぶざまなのは、朴槿恵がこのように侮辱されても米国というご主人様に媚びたことである。事大と屈従がもたらすのは悲惨な終末だけだ。
南の心情を見透かす北
激しい言葉が並びますね。
鈴置:いつもこんなものです。韓国メディアの口調も激しくて、日本の水準からすると掲載できないような表現がありますが、北朝鮮の口汚さはそれ以上です。
北朝鮮は韓国メディアもよく研究していて、そこに映し出される南の精神的動揺を見逃しません。
『中国という蟻地獄に落ちた韓国』
バイデン米副大統領の日中韓訪問時の発言について、韓国でのこの激しい半ば恫喝するような物言いとは対照的に、日本では広範囲な話題に触れ、また東日本大震災の際に日本人が見せた落ち着きぶりを称賛する、朴訥だが誠実な内容だった。韓国人が投げつけた「失言王」などと無礼な評価は言語道断だ。2015年の韓国への戦時統制権返還後に、これが米国の最後通牒であったと、韓国人は思い知ることになるだろう。(2013/12/26)