• BPnet
  • ビジネス
  • IT
  • テクノロジー
  • 医療
  • 建設・不動産
  • TRENDY
  • WOMAN
  • ショッピング
  • 転職
  • ナショジオ
  • 日経電子版

減反廃止で「もう廃業しかない!」

農政急変で大規模農家に激震

2013年12月27日(金)

  • TalknoteTalknote
  • チャットワークチャットワーク
  • Facebook messengerFacebook messenger
  • PocketPocket
  • YammerYammer

※ 灰色文字になっているものは会員限定機能となります

無料会員登録

close

頻繁に変わるコメ政策に農家が翻弄されている

 「もう自主廃業するしかない」。もっとも心配していた一言を、旧知の大規模農家が口にした。5年後の生産調整(減反)廃止で米価が下がり、戸別所得補償制度による収入の補填もなくなる。過剰な補助金は確実に農業経営をむしばむことを、自立した経営者は分かっていたはずだ。それでも、二度の政権交代がもたらした不連続な農政の転換は、彼らの予想を超えて経営を直撃した。

 自民党が政権に復帰したことに伴う今回の農政改革の柱は、国が長年、都道府県ごとにコメの生産調整の配分を決め、それを各農家ごとに落とし込んできた減反制度の5年後の廃止だ。これに伴い、民主党が2010年につくった戸別所得補償制度も打ち切る。

 この戸別補償こそ、民主党が自民党から農村票を奪い取ったばらまき補助金だ。自民党の農林族にとって、どれほどいまいましい制度かは想像がつく。だから民主党がつけた名前をそのまま引き継ぐのを嫌い、経営所得安定対策と呼び方を変えた。だが今年は制度の基本的な枠組みと10アール当たり1万5000円の水準は維持していた。

自民党の参院選大勝で動き出した農政

 多くの農家はひとまず安堵したに違いない。だが衣の下に刃はあった。昨年12月の衆院選で政権を奪還したのに続き、今年7月の参院選でも大勝すると、一気に農政が動き出した。戸別所得補償については来年から半額の7500円に減らし、2018年には減反制度とともにこの補助金も葬り去る。もはや余命4年間しかない制度となった。

 この補助金カットを生産者はどう受けとめているのだろう。これまで何度も取材したことのある大規模農家に連絡すると、「どうするって?分からない。教えてほしい。どうしようもない」と早口で語ったあと、はき捨てるように言った。「自主廃業するしかない」。

 あまりの深刻な反応にこちらが返す言葉を失っていると、「まあそれは冗談だが」と言い足した。だが、その口調にはいらだちがにじみ出ており、単なる冗談には聞こえない。「どうなるか分からないが、悪くなることだけは間違いない」。沈んだ調子の会話が続く。

 この経営者にかつて取材したときの内容がよみがえってきた。「稲作は一番いいときでも、採算はとんとん」「民主党の戸別補償は法制化できていない。いつでも廃止できる。危なっかしい」「この補助金に依存していて、大丈夫かという不安がある」。だから、補助金に頼らなくてすむ経営を実現すべきだというのが、彼が繰り返した決意だった。

 だが日本のコメ市場はいまも年々、供給過剰が深刻になっている。補助金とすぐに絶縁できるほど、経営環境は楽ではない。だから誕生した制度だったが、戸別補償の導入とともに、コメ卸は生産者に売価を下げるよう要求した。コメ余りは当然、買い手に有利な市場構造を生む。市場原理の過酷な現実だ。

コメント4

「ニッポン農業生き残りのヒント」のバックナンバー

一覧

「減反廃止で「もう廃業しかない!」」の著者

吉田 忠則

吉田 忠則(よしだ・ただのり)

日本経済新聞社編集委員

1989年京大卒、同年日本経済新聞社入社。流通、農政、行政改革、保険会社、中国経済などの取材を経て2007年より現職。2003年に「生保予定利率下げ問題」の一連の報道で新聞協会賞受賞。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

日経ビジネスオンラインのトップページへ

記事のレビュー・コメント投稿機能は会員の方のみご利用いただけます

レビューを投稿する

この記事は参考になりましたか?
この記事をお薦めしますか?
読者レビューを見る

コメントを書く

ビジネストレンド

ビジネストレンド一覧

閉じる

いいねして最新記事をチェック