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最高の病院でも医療機器が買えない

視察するだけでなく子供たちの治療のために支援を

2014年1月27日(月)

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 「ソ連が崩壊して、今のほうが状況が良くなっていなければならないはずなのに、逆に悪くなった」

 デモが始まる前に私が訪れた病院で、現在の医療環境について語った医師の言葉だ。この思いは、国民の生活全般にもあてはまる。キエフ中心部で反政府デモが始まって早2カ月。収束に向かうどころか、死者を出す事態にまで発展してしまった。国民の不満は一体どこにあるのだろう。首都キエフにある病院の現状を通して見てみようと思う。

国立放射線医学センターの小児科医エフゲニア・ステパーノヴァ教授

 「外国人に見せるとみんな驚いて、こんなに古い医療機器は博物館に飾るべきだって、いつも笑われるの!」

 2013年2月、首都キエフにある「ウクライナ国立放射線医学センター」を訪れた際に見せてもらったのは、チェルノブイリの子供たちの間で増えた白血病を発見するための医療機器である。原発事故後、1980年代の終わり頃から使われている日本製のこの血液分析器は、もはや古くて修理さえもできないという。

 「でも、ここは放射線医学におけるウクライナ最高峰の病院でしょう? それなのに白血病の検査ができないんですか?」

 旧ソ連各地の病院を訪問してきた私だが、今回ばかりは驚いてしまった。なぜなら、ここは汚染地域にある小さな地区病院ではなく、首都にある国立の医療機関なのだから。このセンターはチェルノブイリ原発事故による健康被害の問題に取り組むために、事故から半年後、当時のソ連政府によって創設された特別な医療機関だ。ここで治療ができなければ、他にチェルノブイリの被災者が頼れる病院はウクライナにはないと言っていい。

 「ウクライナ政府はできる限りのことをしてくれていますが、ソ連政府と違ってお金がないのです。だから、25年以上もソ連政府が購入した血液分析器を使っています」

80年代から使われてきた血液分析器。長い間、多くの子供たちの白血病発見の役に立ってきたが、もう使い物にならなくなってしまった

被災した子供が満足な治療を受けられない現状

 91年に独立したウクライナは、医療分野に十分な予算を充てることができなかった。放射線医学センターの建設工事は長期化し、現在の施設が完成したのは99年になってからだ。

 「最新型の血液分析器を寄贈してくれたら、長期的な支援になるし、ウクライナ全土の子供たちのためにもなります」

 ウクライナでは、人口の少ない町には専門医が置かれないため、小児科医が子供たちのあらゆる病気を診なければならない。このため、満足な医療を受けられない子供もいる。現在約46万人の子供の被災者がいるが、この病院では例年、約1万2000人の子供たちが診療を受け、そのうち2500~3500人が入院治療している。

 病院の小児病棟を一通り案内しながら説明してくれたのは、チェルノブイリの子供たちの健康問題について最も詳しい医師の一人である、エフゲニア・ステパーノヴァ先生だ。ステパーノヴァ先生は国立放射線医学センターで放射線小児科・先天性遺伝病理学科部長をしている。

 「今ではチェルノブイリの汚染地域の空間線量が下がっているので、住民が外部被曝で病気になるようなことはありません。でも、食べ物による内部被曝はいまだに続いています。ウクライナでは、みんながみんな放射能検査済みの食品をスーパーや市場で買えるほど裕福ではないからです」

コメント3件コメント/レビュー

どうも情報のミスマッチが生じていたようですね。まずウクライナ政府は何をしているか?政府が貧乏で済む話か?。同政府がちゃんと日本に情報発信して危急を訴えていればなんとでもなりそうな規模では?。またこれまでの日本の報道では、チェルノブイリの方が日本より被曝地域の子供達へのメンタルケアが浸透している、といったレポートが多かった気がします。(2014/01/27)

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「最高の病院でも医療機器が買えない」の著者

宮腰 由希子

宮腰 由希子(みやごし・ゆきこ)

ロシア語通訳

ロシア語通訳、NGO「ダール・アズィーザ」事務局長。1983年青森県弘前市生まれ。17歳の時にチェルノブイリに行き現地を視察。2002年~08年、モスクワ国立大学留学。現在はキエフに滞在中。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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記事のレビュー・コメント

いただいたコメント

どうも情報のミスマッチが生じていたようですね。まずウクライナ政府は何をしているか?政府が貧乏で済む話か?。同政府がちゃんと日本に情報発信して危急を訴えていればなんとでもなりそうな規模では?。またこれまでの日本の報道では、チェルノブイリの方が日本より被曝地域の子供達へのメンタルケアが浸透している、といったレポートが多かった気がします。(2014/01/27)

ウクライナの病院の皆さまは、お気の毒だと思います。しかし、これまで日本人がウクライナのために何もしてこなかったかのような記事の書き方には違和感を覚えます。ご存知かとは思いますが、事故当時は政府・民間を問わず、日本は金銭的支援、医師派遣、機材贈与など、多大な支援をしてきました。事故後30年近くたった今も、現地で被爆者医療に携わる医師を、日本側の費用負担で招聘し、本邦研修を行い続けている機関がいくつもあります。それなのに、「日本がウクライナに対し、永続的に最新機材を買い与えていない」という理由で、日本人が何もしていないかのように書かれるのは大変残念です。そもそも、ウクライナの病院が貧しいのは、一にウクライナ政府の失政の結果であり、次いで常に東西に分かれて反目し合い、団結しようとしないウクライナ人自身の気質にあるのではないでしょうか。我々はもはや、チェルノブイリ原発事故当時の金満国ではありません。世界でも有数の借金国なのです。その中でできることをしている機関はたくさんあるのに、著者及び著者の取材を受けたウクライナの医師ががそれを全く無視していることが残念でなりません。(2014/01/27)

チェリノブイリよりも福島県相双地域のほうが状況は悪いです。モニタリングポストも大部分は除染した場所に移設されました。そのため環境放射線量は半減しました。私たちの一般住宅は減衰していません。小高区の内陸部では線量が増加に転じています。全世帯に線量計を配布したのでごまかすことはできません。南相馬市民より。(2014/01/27)

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