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誰が「魔法の小麦」を殺すのか

危機に立つ自給率向上の切り札

2014年2月14日(金)

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 日本の農政はなぜいつもコメばかりが焦点になるのだろう。政府が2018年に生産調整(減反)を廃止すると決めると、農協や農林族が「米価が暴落するから大変だ」と心配し、飼料米など主食にならないコメに農家を誘導しようと躍起になる。そのかげでひっそりと、自給率向上の切り札と期待される「魔法の小麦」が存亡の危機に立っているのだ。

並外れた弾力性の「パンに向く小麦」

ゆめちから(右)は一般の小麦と比べ、色が濃いのが特徴。左はうどん用の代表的な品種、農林61号

 「ゆめちから」。これが全国から注目を集めている小麦の名前だ。ところが今年の秋にとれる小麦の価格を決めるため、全国米麦改良協会が昨年秋に実施した入札の結果は衝撃的だった。落札価格は1トン当たり4万8916円。1年前より4割強も下落した。

 入札価格は、前年産をもとに決まる基準価格の上下10%の値幅制限内におさめるのが本来のルール。だがそれでは割高感が強く、10月に2回入札を実施してもまともに買い手がつかなかった。そこで値幅制限を上下50%に緩めて11月に再入札を実施し、前年より大幅に値を下げてようやく決着した。

 ゆめちからは、2009年に品種登録された新しい小麦だ。独立行政法人、農業・食品産業技術総合研究機構の北海道農業研究センターがハンガリーや米国の小麦と日本の小麦をかけ合わせて開発した。この品種がなぜすごいかと言うと、いまはほぼ100%輸入に頼っているパン用の小麦に使えるのだ。

 もちろん、ゆめちから以前に日本にパンになる小麦がなかったわけではない。例えばローソンは「春よ恋」という品種を使い、国産100%のパンを売り出した。ただこの品種を含め、春にタネをまくタイプの小麦は8月下旬ごろの収穫までの生育期間が短く、収量が不安定になりがちという弱点がある。

 これに対し、ゆめちからは秋にタネをまき、約1年かけてゆっくりと育てるタイプの品種なため、収量がぐっと安定する。しかも病気への抵抗力が極めて強い。湿気が多く、病気による作物の被害が多い日本ではうってつけの品種だ。

 技術的な話がやや長くなったが、ここからが肝心。そもそも「パンに向く小麦」とは何を指すのか。日本の小麦にも特色と強みはある。例えば、水でこねて麺棒を当てるとすっときれいに伸びる。これは日本人がもともと食べてきた、うどんを作るのに向いた性質だ。だがパンを作るには逆に、ゴムボールのように形がもとに戻る弾力性が必要になる。

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「誰が「魔法の小麦」を殺すのか」の著者

吉田 忠則

吉田 忠則(よしだ・ただのり)

日本経済新聞社編集委員

1989年京大卒、同年日本経済新聞社入社。流通、農政、行政改革、保険会社、中国経済などの取材を経て2007年より現職。2003年に「生保予定利率下げ問題」の一連の報道で新聞協会賞受賞。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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