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農業を救うのは「土」か「机」か

経営革新つぎのステップへ

2014年5月16日(金)

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 農業経営が新たな模索を始めている。家業から企業への脱皮を目指す農家が、畑仕事も営業も金策も一人でこなしたのは昔の話。これからはだれが畑に出て作物を育て、どんな人材が経営を補佐するかが課題になる。「ふつうの企業」への歩みがいよいよ始まったのだ。

生産部門の責任者から独立

 ゴールデンウィークに、JR嵯峨野線で京都市のとなりの亀岡に向かった。列車は国内外の観光客ですわる場所もない混雑状態。だが映画村で有名な太秦や嵐山、保津峡などの観光地をすぎると次第に乗客はまばらになり、亀岡が近づくと車内に人影はほとんどなくなった。

 窓外に広がるのは、いちめんの畑。遠くの農道を豆粒のような軽トラックが走る。観光地のにぎわいとは別世界。そこは週末も休日も関係ない、農家たちの“職場”だ。取材相手である田中武史も、いつも通り畑で汗を流していた。

 田中はネギを生産する有数の農業法人、こと京都(京都市)を2012年12月にやめ、亀岡で就農した。この連載で以前紹介した通り(「サラリーマンに農業は無理なのか」2013年9月13日)、こと京都で生産部門の責任者をしていたが、「自分で商売したい」という初心を思い出し、独り立ちした。

農業機械を置く倉庫は独立した田中武史さんの“城”だ(亀岡市)

 こと京都で働くようになったのは、いまから14年前。もともとは長距離トラックの運転手をしていた。収入はそれなりにあったが、ほとんど家に帰れない毎日だった。「このままでいいのか」と迷い始めたころ、つぎの仕事の相談に行っていたハローワークから連絡があった。「山田敏之という農家が人を募集している」。田中が33歳のときだ。

 当時の山田の様子を聞くと、田中の答えは「ぼくがいまやってる、こんな感じです」。いまでこそ売り上げが7億円強、従業員と研修生とパートを合わせて約100人の農業法人を率いているが、そのころはまだふつうの農家を半歩踏み出そうとしたところだった。二人で炎天下にネギを植え、雑草を抜き、収穫する毎日。田中は「作業を覚えたら、独立しよう」と思っていた。

コメント1件コメント/レビュー

私は農家出身。農業という肉体労働は精神的にも苦痛を強いられる。文中に登場する田中武史さんの「妥協しなくなった」という言葉はたいへん重い。いわゆる自分にも「甘えない」こと。このような人たちが少しでも多くなってほしい。余談であるが、ある暑い夏の昼下がりに、都市近郊の水田において汗水流して農作業をしていた人がいた。これを見た親子連れ(子供は小学生くらい)の親が「勉強しなかったらあんな風になるよ」と子供に話していた。日本のトップから下層階級まで、このような潜在意識が刷り込まれているに違いないと思う。日本において、肉体労働を蔑視する感情はどのようにして醸成されたのだろう。(2014/05/16)

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「農業を救うのは「土」か「机」か」の著者

吉田 忠則

吉田 忠則(よしだ・ただのり)

日本経済新聞社編集委員

1989年京大卒、同年日本経済新聞社入社。流通、農政、行政改革、保険会社、中国経済などの取材を経て2007年より現職。2003年に「生保予定利率下げ問題」の一連の報道で新聞協会賞受賞。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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記事のレビュー・コメント

いただいたコメント

私は農家出身。農業という肉体労働は精神的にも苦痛を強いられる。文中に登場する田中武史さんの「妥協しなくなった」という言葉はたいへん重い。いわゆる自分にも「甘えない」こと。このような人たちが少しでも多くなってほしい。余談であるが、ある暑い夏の昼下がりに、都市近郊の水田において汗水流して農作業をしていた人がいた。これを見た親子連れ(子供は小学生くらい)の親が「勉強しなかったらあんな風になるよ」と子供に話していた。日本のトップから下層階級まで、このような潜在意識が刷り込まれているに違いないと思う。日本において、肉体労働を蔑視する感情はどのようにして醸成されたのだろう。(2014/05/16)

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