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社畜2.0の時代~労働者が機械になる日

インダストリー4.0が実現する新世界

2014年5月20日(火)

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人間を動物のように扱っていいとも

 世の中にひろく喧伝されている概念にもかかわらず、実際に原典を読んだ人がほとんどいないケースがよくある。たとえば、マーケティングで有名なマイケル・ポーターはビジネスマンが多く引用するのに、その著書「競争優位の戦略」は意外に読まれていない。社会主義国や共産主義国の限界や、欧米資本主義国との軋轢がこれほど話題になっているのに、カール・マルクスの「資本論」を読んだ経験のある人は少ない。

 あるいはテイラー主義はどうだろうか。テイラー主義とは生産現場に科学的管理法を導入することだ。フレデリック・テイラーが提唱したもので、「科学的管理法」などの一連の著書にまとめてある。

 生産現場において労働者をむやみやたらに使うのではなく、作業のストップウオッチ計測やスケジュール管理によって効率を最大化していく。勘や経験、あるいは直感に頼るのではない。データを把握、分析することで、工程編成や作業内容を常に修正し続ける。テイラーは、口頭伝承を廃止させ、作業のマニュアル化と書式化を進めることで、近代的生産手法を誕生させた。最小コスト最短時間での最大付加価値を狙う企業にとっての「当然」を発明したのだ。そしてそれはまさに現代経営の近代的マネジメントのはじまりでもあった。

 とはいえ、このていどの認識ならば、氏の著作を読んでいないビジネスマンでも有しているだろう。しかし興味深いのは、実際に氏の著書「科学的管理法」を読むと、その思想が極端なほどに表れていることだ。

 例えば、マネジメント層に対し、作業者は金銭で釣るほうがよいとし、仕事の中身は伝えてはならないとアドバイスする箇所がある。<シュミットが高賃金に惹かれるのを見越してもっぱらこの点に焦点を合わせ、「そんなつらい作業は無理だ」などと思わせないように、仕事の中身からは気を逸らしておくのが得策なのだ>(56ページ)。

 また、報酬の与え方については、<未熟な存在、たとえば自転車のベアリング用ボールを検査する若い女性、あるいは子ども>(111ページ)は相応の励みを1時間おきにせよ、と述べている。

 現場の人間に任せれば仕事に応じた適切な人選は不可能だとし、労働者にはその<必要性を悟るだけの明敏さはない>(74ページ)とまで書いている。

 そして、ほかより仕事量をこなす作業者については、<けっして周りよりも優れていたわけではない。単に不器用な力持ちだっただけである。とりわけ秀でているわけではないが、見つけるのが難しいため、珍重されるのだ。その一方、常識や考えが足りないため、肉体労働の分野においても、こなせる仕事は多くない>(73ページ)とまで書く。

 失礼ながら、その書き方に、私は声を上げて笑ってしまったほどである。労働者を動物的に扱うねじれた真面目さに、ある種の清々しささえ私は感じた。名著であるのは疑いない。ただし、科学的管理法なるテーゼしか知らない人にとっては、だいぶ異なる印象を受けるだろう。

 マルクスは人間の労働力そのものが商品となり、生産ラインに配置され、分業化によって1人ひとりが分断されることを疎外と呼んだ。なるほど、その意味ではマルクスの指摘は正しかったのだろう。資本主義は社会に窒息死するほどの商品を溢れさせ、商品を「買う」という行為で共産主義以上の平等を実現した。しかし、我々はその社会のなかで徹底的に機械化されようとしている。

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「社畜2.0の時代~労働者が機械になる日」の著者

坂口 孝則

坂口 孝則(さかぐち・たかのり)

調達・購買コンサルタント

大阪大学経済学部卒業後、電機メーカー、自動車メーカーに勤務。原価企画、調達・購買、資材部門に従業。調達・購買関連書籍23冊を上梓。2010年、調達・購買コンサルタントとして独立。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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