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ホチキスの針は手で取るな

安全への強烈なこだわりはなぜ生まれたのか

2014年6月4日(水)

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 どうやって成長事業を見定め、衰退事業から経営資源を移していくか。これは日本企業にとっても大きなテーマだろう。

 そのケーススタディーとなる企業の1つが、世界的な大手化学メーカーとして知られる米デュポンだ。身近な商品に使われる同社の技術としては、女性用ストッキングなどの素材であるナイロンや、鍋やフライパンを焦げ付きにくくするテフロンがよく知られる。

 「日経ビジネス」6月2日号では、そのデュポンを特集した。

 今年で創業212年となる同社は、安全に対するこだわりの強い会社としても知られる。今回はデュポンの安全への徹底ぶりを示すエピソードとその背景を紹介する。

 「急がなくていいから、手すりをつかんで」

 日経ビジネス6月2日号特集「デュポン 200年企業が見る未来」の取材で、同社の拠点を訪れた際、待ち構えていた取材相手にかけられた第一声がこれだった。場所は駐車場から建物の玄関に上がるほんの数段しかない階段。到着するまで少し道に迷い、約束の時間ギリギリになったため急いで駆け上がろうとした時のことだ。階段では転倒など事故の危険があるから手すりをつかむというのがデュポンのルールだという。

会議の冒頭は避難経路の説明

 一連の取材では似たような経験を何度もした。自動車での移動では、どの国でも後部座席だろうが何だろうが、搭乗者全員がシートベルトをしなければ決して発車しない。筆者もうっかりシートベルトを締め忘れ、何度か注意された。

 実は同社は安全への徹底ぶりで知られている。

デュポンホテルの階段には手すりの利用を促すサインが埋め込まれている(写真=常盤 武彦)

 米デラウェア州ウィルミントンにあるデュポン本社。この建物には、1913年に開業した老舗高級ホテル「デュポンホテル」のほか、ミュージカルや演劇の劇場「デュポンシアター」も入居している。昼食時にはランチビュッフェを目当てに裕福そうな地元のご婦人が列をなす。こんな場所とて例外ではない。階段には「USE HANDRAIL(手すりにおつかまりください)」というサインが埋め込まれていた。凝った意匠のインテリアとは相容れない無粋なサインだが、安全第一がデュポン流ということだ。

コメント6件コメント/レビュー

>そのうち書かれたり、決められたりしていなければ危険だと思わない人であふれるのか・・・  というのは間違いです。まず書いてみないと気がつかないような危険がたくさんあるのです。前もって書いて、決めて危険を減らした上でその通りに活動する、そういう人が増えてほしいのです。(2014/06/04)

「デュポン 200年企業が見る未来」のバックナンバー

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「ホチキスの針は手で取るな」の著者

細田 孝宏

細田 孝宏(ほそだ・たかひろ)

日経ビジネス 副編集長

1995年早稲田大学卒業。日経BPに入社し、日経ビジネス編集に配属される。日経アーキテクチュア編集、日経ビジネス・ニューヨーク支局長などを経て現職

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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記事のレビュー・コメント

いただいたコメント

>そのうち書かれたり、決められたりしていなければ危険だと思わない人であふれるのか・・・  というのは間違いです。まず書いてみないと気がつかないような危険がたくさんあるのです。前もって書いて、決めて危険を減らした上でその通りに活動する、そういう人が増えてほしいのです。(2014/06/04)

馬鹿馬鹿しい、やっていられるかという反応は理解できる。だが一度でも事故を経験すると勤務中に怪我をするというのは個人の不注意では済まされないのだということを思い知らされる。安全対策は嫌がらせではなく、実際に起きた事故に基づいている。あまりにも効率を阻害するので代案があるという提案ならともかく単にうるさい、面倒、言われるのが面白くないという理由で反抗するのは幼稚な反応だろう。しまった、と思った瞬間はもう手遅れなのだ。(2014/06/04)

細かく決められていると考えなくなる、というのはむしろ逆でしょう。ふつうの会社に勤めたら、ここまで安全に意識が向きません。やりすぎと思える規則に直面すれば「なぜだろう」と理由を考えざるを得ません。明示された規則がない場面では「どんな潜在的な危険が見過ごされているだろうか」と気になるはず。逆に言えば、そうならないで「窮屈だ」「意味のない規則だ」と思う人には勤まらない会社ではあるでしょうね。マニュアルを与えられて、背後にある理由に思いが至らないとしたら、それはその人の資質の問題、そういう人を教育しないで放置する組織の問題なのだと思います。ま、日本(の特に学校)には無意味な規則が多いため「窮屈だ」と嘆くだけで思考停止する癖が教育されてしまいますけれども。(2014/06/04)

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三品 和広 神戸大学教授