『なぜ韓国は中国についていくのか――日本人が知らない中韓連帯の深層』を上梓した荒木信子氏に聞いた(司会は坂巻正伸・日経ビジネス副編集長)。
対日共闘は冷戦期に萌芽
中国と韓国の「対日歴史共闘」は1980年代に萌芽がある、とのご指摘は新鮮でした。

韓国研究者、翻訳者。『なぜ韓国は中国についていくのか――日本人が知らない中韓連携の深層』(2014年、草思社刊)で、日本人の気がつかなかった微妙な中韓関係を掘り下げ、注目される。1963年生まれ。1986年に横浜市立大学文理学部国際関係課程卒業、1992年、筑波大学大学院地域研究研究科東アジアコース修了。修士論文のテーマは「韓国人の日本観」。訳書に『金大中 仮面の裏側』『「偉大なる将軍様」のつくり方』など。『ある朝鮮総督府警察官僚の回想』『日本統治時代を肯定的に理解する』に編集協力した。(写真:尾関裕士、以下同)
荒木:第2章の「中韓関係の節目、国交正常化」のところですね(66ページ)。対日歴史共闘が芽生えたのは1982年のいわゆる教科書問題からです。当時は冷戦真っ盛り。もちろん中韓両国の間に国交はなく、敵同士でした。
しかし韓国の国会議員の中には、中国と連携して日本に対抗しようとの発想が生まれていたのです。国交がなかったため、現在のような明確な「反日共闘体制」には至りませんでしたが、この時に今の中韓連携の下地が準備されたといえます。
鈴置:韓国人の対中依存心の根深さを物語っていますね。
荒木さんは豊富な資料を使って、韓国がどんどん中国に取り込まれている半面、日本とは疎遠になっている現実を描き出しました。これも多くの日本人にとって驚きの話です。
荒木:李明博(イ・ミョンバク)大統領が竹島を訪問した後に「日本はもう昔の日本ではない」と語りました。
鈴置:「日本に昔のような力はない。もう、怖くないぞ。日本を怒らせても反撃してこないから大丈夫」との趣旨でした。
日本を上から目線で見る韓国
荒木:ええ、それが本音でした。そして、その韓国人の心情の変化――上から目線で日本を見るようになっていることに、日本人は気がついていませんでした。韓国もまた「昔の韓国ではなくなっていた」のです。
韓国にとって中国の存在は大きくなる一方です。韓国を訪れた外国人の数は、2013年に日本人を抜いて中国人が1位になりました。
韓国に定住する登録外国人の数で見るともっとはっきりします。中国籍を持つ韓国系中国人である朝鮮族を含めると、中国人の数は1995年に日本人を抜いて3位に。翌1996年には1位に躍り出ます。1992年の中韓国交正常化からわずか4年後です。
鈴置:私は1987年6月から1992年2月までソウルに住んでいましたが、その頃、中国籍の人に会ったことも見たこともありませんでした。韓国にとって中国は国交がないというだけではなく、朝鮮戦争で戦った敵国だったためです。
当時の韓国は――1987年に民主化するまで「反共」を国是にしていましたから、共産圏の人間は存在するべくもなかったのです。東欧からの留学生が韓国の大学にいると聞いて「こりゃニュースだ」と調べに動いたこともあったほどです。
結局は日韓の国民性の違いは埋めれるような幅の問題ではなく、水と油のような性質の違いなのだ。反共産主義などという政治的な要因が一時はエマルジョンの如く水と油を混和させた時期があったが、政治経済のバランスが変わると結局は水と油は分離する。厄介なことに韓国は自分たちが油で常に水である日本の上に在るべき考えている。免れない最低限の界面の接触の国交で日本は韓国との関係を留めているべき。日本にとって信用も尊敬もできないタイプの国民性なのだから、未来永劫良き関係が出来ることはないでしょう。(2014/06/17)