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最強の農業経営のヒミツ

フル稼働の工場のように

2014年7月11日(金)

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 最強の農業経営とは、どんな経営だろう。取材を通してみえてきた答えは「徹底的に合理的であること」。そう書くと、意外性のかけらもない解答に拍子抜けするかもしれないが、では合理的な農業経営とはどんなものだろう。そのヒントが、岩手県花巻市の盛川農場にある。

 以下の話は、巨額の資本力も、高度なIT技術も、派手な海外展開も関係ない。もちろん、採算度外視で「奇跡の味」を生み出す神秘的な技とは縁もゆかりもない。そこにあるのは、農業外のふつうの企業にも通じる経営哲学だ。

「乾田直播」のすたすた歩ける田んぼ

 6月半ば、盛川農場の田んぼを訪ねると、小さな苗が風にそよいでいた。「こうやって歩けるんですよ」。代表の盛川周祐はそう言うと田んぼに下り、そのまますたすた歩き始めた。ふつうの田んぼだと、泥に足をとられてこうはいかない。ここに農場の秘密の1つがある。

泥でぬかるまない特殊な田んぼ

 ハウスで苗を育ててから田んぼに植えるのではなく、田んぼにじかにタネをまく農法があることは読者の多くもご存じだろう。盛川農場はそのうち、乾いた田んぼにタネをまき、苗がある程度育ってから田んぼに水を入れる「乾田直播」という技法を使っている。

 田植えのように田んぼの土をこねるのではなく、逆に機械で押し固めてからタネをまき、まいたあとにもう一度鎮圧する。ふつうの田んぼと違い、中を自由に歩き回れるのはそのためだ。

 この方法は田植えと比べて作業がごく短時間ですむため、コストを大幅に下げることが可能になる。ただ、田植えとは違う機械や技術が必要で、しかも収量を安定させるのが難しいため、兼業の仕事を持つふつうの農家は手を出さない。この「田植えとは違う機械」が肝心な点なのだが、そのことは後述する。

 農研機構・東北農業研究センターの大谷隆二の指導を受け、盛川はこの技術の実用化に挑戦した。その結果、2011年には単位重量当たりのコストを東北平均の半分近くに圧縮するという劇的な効率化を実現した。一般の田植え用のものと比べて、収量の多い品種を選んだため、その効果はさらに増幅した。

 ここで読者が思い浮かべるのは、環太平洋経済連携協定(TPP)だろう。日本の稲作は効率で海外に張り合うのは到底不可能。だから日本はコメを「聖域」にした。だが、ここまでコストを減らせるのなら、日本のコメも国際競争力があると期待したくなるかもしれない。

コメント7件コメント/レビュー

効率化と同時に、3K産業からの脱皮も重要だ。いろんな意味で”インテリジェンス”が必要ではないだろうか。規模が違うというだけで終わらせず、欧米農家に見られる生活様式の豊かさ(単に金銭的なものだけでなく)やセンスのよさも学ぶ必要があるのでは。(2014/07/15)

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「最強の農業経営のヒミツ」の著者

吉田 忠則

吉田 忠則(よしだ・ただのり)

日本経済新聞社編集委員

1989年京大卒、同年日本経済新聞社入社。流通、農政、行政改革、保険会社、中国経済などの取材を経て2007年より現職。2003年に「生保予定利率下げ問題」の一連の報道で新聞協会賞受賞。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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記事のレビュー・コメント

いただいたコメント

効率化と同時に、3K産業からの脱皮も重要だ。いろんな意味で”インテリジェンス”が必要ではないだろうか。規模が違うというだけで終わらせず、欧米農家に見られる生活様式の豊かさ(単に金銭的なものだけでなく)やセンスのよさも学ぶ必要があるのでは。(2014/07/15)

アメリカ大陸やオーストラリア等の新大陸に於ける米作は乾田直播が一般的だと思う。そう言う意味に於いて「田植え」はアジアに於ける米作風景なのだと思う。新大陸農業は、何を作るにしても、日本と比べたら経営規模は桁違いに大きい。然し、「大雑把」では決して無い。コスト意識が高く、各種農業機械でも稼働率は日本のそれの何倍も高いだろう。日本は規模の小さな兼業農家が短時間で作業出来る様に能力過剰な大型機械を農家毎に売り込んだ。この事が世界にも稀な低稼働率農業機械を農地に蔓延らせてしまった。新大陸では、大型農機を使う作業は日の出と共に始まり、日没まで続ける、という感じに近い。一方、日本では田植えは大き目の田圃でも2、3時間で終わってしまう。アタッチメントを交換すれば、他の作業にも使えるのだろうが、大陸農業に於ける農機の稼働率の高さとは比べ物にならない。更に、日本の水田は1枚が小さい為に、「切り返し」作業がやたらと多い。何年か前にテレビの取材で日本人が「農業機械を使った事もある」と言って、アメリカの農場で農機を運転させてもらっていたが、何百メートルも「直進」と言われたのに、よたってしまい「真直ぐ進むのも難しい」とコメントしていた。東北や北海道の農地では経営規模も大き目だろうが、滋賀県では小さいものが多く、あぜがやたらと多い。これも農業の機械効率を損ねている。私の住む町では、「町を発展させるには農地の転用開発をやり易くすべき」ということで、今まで以上に無計画な開発で農地が虫食い状態で潰されて行く。日本は国土が、特に平地は極端に狭いのだから、有効に使わなければならない。商業地や、工業、宅地、農地を夫々の目的にあった場所に割当て、無駄なく使って貰いたい。虫食い状態の田畑をかき集めても農業の高効率経営は出来ない。耕作放棄地は農業生産されないだけでなく、景観を損ねたり、外来種の雑草の繁殖地になったりで良い事が無い。法律で、二年以上耕作放棄されたら、農地利用権を自動的に取り上げ、優良経営者に只で貸し出せる様に制度化するべきだと思っている。この記事を読んでも、新大陸農業と対等に戦えるまでいかなくても、そこそこ勝負出来るのではと思える。国は、是非とも制度を充実して、世界と競争出来る農業を支援して欲しいものだ。(2014/07/14)

記事の最後の一段落、まったくそのとおりだと思います。なので、この盛川農場さんが、どういう販路、流通経路で生産物を販売しているか、きちんと紹介してほしかったです。(2014/07/11)

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