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普通のサラリーマンが、普通に幸せな老後を過ごすために

伸こう福祉会 片山ます江専務理事

2014年8月11日(月)

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リゾートホテルのような広々とした空間だが…。(写真:渡邊奈々、以下同)

 川崎市幸区。高度成長期に建てられ、昭和の時代を強く思い起こさせるマンモス団地・河原町団地の真ん中に、ぽつりとたたずむ真新しい建物がある。自動扉の向こう側は、まるでリゾートホテルのような空間だ。

 落ち着いた色合いの木と赤、黒を主体にした、センスを感じるインテリア。やわらかな照明で照らし出される空間に一歩足を踏み入れると、目の前には木製の書棚にさりげなく並ぶ本と、カフェ風のしゃれたキッチンと、コーヒーメーカー。右手のラウンジには、様々にレイアウトされたテーブルと椅子があり、会議室との間は、壁ではなくガラスで仕切られ、中で話し合う人の姿が見える。東京・六本木ヒルズのライブラリスペースを彷彿とさせる、落ち着きある空間だ。

 ラウンジでは、車いすの高齢者と、スタッフらがゆったりとくつろぐ。だが、ここは高所得者向けの高級施設でもなければ、民間のケア付きマンションでもない。基本的に、65歳以上で要介護認定を受けた人なら割安な料金で入所できる、特別養護老人ホームである。

 ガラスの壁越しに見える会議室には大きなテーブルがあり、太く赤いひもで編まれたバスケット越しに、笑顔で手を振る女性がいた。この特別養護老人ホーム「クロスハート幸・川崎」を造った、片山ます江だ。椅子の背のむこうには赤い大きな花が描かれた美しい壁掛けがある。

 「調度品はどれも安いのよ。これは古道具屋で2万円」と、片山はカラカラ笑う。ホーム内には様々なデザインの椅子が、そこかしこに置かれている。どれも素敵な椅子だが、飾りとして置いているわけではない。歩き疲れた入居者が、どこでも気軽に座れるように、という配慮なのだ。

訪ねるのが楽しくなるような空間に

 こんな空間なら、訪ねてくる入居者の家族はさぞや楽しい気分になり、訪問が明るい思い出となるだろう。そしてまた「会いに行ってみよう」と自然に思えるに違いない。そんなことを意図して作られたのが、この「クロスハート幸・川崎」の1階スペースなのである。

 河原町団地では、高度成長期に入居した住民の高齢化が進んでいた。クロスハート幸・川崎は、住民の高齢化の進展を少しでも緩和するようにと、2006年に閉校した川崎市立河原町小学校の跡地に建てられた。市営や県営などの古い高層団地群の中にある、地域に根差した老人ホームであることの意義を片山はこんなふうに見ている。

 「実はここの職員にも、団地に住んでいる方が多いの。例えば、ちょっと釘がないかな…と言うと、待ってて!と自宅に戻って取ってきてくれたりする。すごくいいと思わない?」。1階の会議室や緑豊かなテラスは地域住民向けに開放しているから、ちょっとしたイベントを気軽に開くことができる。コーヒー専門店のバリスタを講師に招いて、地域の高齢者らを対象にしたワークショップを開いたりもした。

 またホーム内には託児所も併設している。職員の子供たちがここで過ごしており、ガラス越しに子供たちが遊ぶ姿が見える。

 フロアのどこかで、見える場所に人がいてくれる安心感。高齢者でなくても住みたくなる。一言でいえばそれが、片山がこれまで目指してきた老人ホームのありようだ。

 片山は、株式会社で携わった老人ホーム事業などの経営を経て1999年、福祉事業を幅広く展開する社会福祉法人・伸こう福祉会を設立、現在は専務理事を務める。伸こう福祉会は各種老人ホームや保育園などの福祉施設を運営し、利用定員は1596人に達し、スタッフは922人に上る。社福の売上高に相当する事業活動収入は46億8000万円(2014年度アニュアルリポートより)である。

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「普通のサラリーマンが、普通に幸せな老後を過ごすために」の著者

治部 れんげ

治部 れんげ(じぶ・れんげ)

経済ジャーナリスト

経済ジャーナリスト。昭和女子大学現代ビジネス研究所研究員。1997年一橋大学法学部卒業後、日経BP社で16年間、経済誌記者。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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