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嫉妬心か、予算削減への焦燥感か

【3】屈折

2014年8月6日(水)

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 「これは重要な問題ではないか」。2012年8月に公表された、国の再生医療研究プロジェクトの事後評価報告書。その審議過程で国内のある研究チームから提出された資料に、評価委員たちの表情は固まった。

 資料には、iPS細胞の遺伝子を解析した結果、高い頻度で突然変異が生じるというデータが記されていた。遺伝子変異は、細胞のがん化を引き起こしかねない深刻な現象。一部の委員からは、追加検証が必要だとの声が上がったが、その後、この話題が委員会で持ち出されることはなかった。出席者の一人は「課題はあっても、iPS細胞研究を推進するのが国の既定路線だった」と推測する。

(写真=上:Bloomberg via Getty Images)

 同年秋に京都大学教授の山中伸弥がノーベル生理学・医学賞を受賞し、首相の安倍晋三が10年間で1100億円の予算投入を確約した再生医療研究。その大半を占めるiPS細胞研究だが、実用化には大きな壁が立ちはだかる。最たるものが安全性の問題だ。作製方法の改良から、iPS細胞のがん化リスクは発見当初より下がったとされるが、ゼロになったわけではない。

 さらにコストの問題もある。iPS細胞が威力を発揮する難病の多くは患者数が少なく、市場規模も小さい。患者一人ひとりのために多大な時間と手間をかけて組織を再生する治療法が、産業として成り立つのかどうかは未知数と言える。

 再生医療関連の政府有識者は「今の国の政策は、iPS細胞を使うことに固執している。いったい誰のための、何のための医療なのか」といぶかる。iPS細胞研究に傾倒する国内再生医療の現状に、危惧を抱く研究者は少なくない。

 冒頭の会合からさかのぼること4年前の2008年5月。文部科学省3階の会議室で開かれたライフサイエンス委員会の作業部会では、前年11月に山中が発表したヒトiPS細胞の研究を、国家プロジェクトに“格上げ”するための計画が議論されていた。

「シリーズ検証 STAP細胞、失墜の連鎖」のバックナンバー

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「嫉妬心か、予算削減への焦燥感か」の著者

林 英樹

林 英樹(はやし・えいき)

日経ビジネス記者

大阪生まれ。神戸大学法学部卒業後、全国紙の社会部記者として京都・大阪で事件を取材。2009年末に日本経済新聞社に入り、経済部で中央省庁担当、企業報道部でメディア・ネット、素材・化学業界などを担当。14年3月から日経BP社(日経ビジネス編集部)に出向し、製造業全般を取材している。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

田中 深一郎

田中 深一郎(たなか・しんいちろう)

日経ビジネス記者

日経新聞科学技術部、証券部を経て、2012年4月より日経ビジネス記者。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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