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メディアに迎合する道を選んだ

【4】迎合

2014年8月7日(木)

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 1月29日に理化学研究所が発表したSTAP細胞の研究成果。国内のある生命科学研究者は、理研のプレスリリースを一読して強い違和感を覚えた。目に留まったのは、要旨に記された「短期間に効率よく万能細胞を作る方法を開発しました」という一文だ。

 「万能細胞」という言葉は、ES細胞研究が活発化した1998年頃に生まれた。神経や骨、筋肉など様々な組織に分化するとの意味で新聞やテレビが多用するが、科学的な厳密さはなく、研究者の多くはその使用に慎重な姿勢を示す。京都大学iPS細胞研究所は「万能という表現は『どんな病気でも治す魔法の細胞』という印象を与えかねない」として、報道資料でもiPS細胞を「多能性幹細胞」と表記する。

(写真=上:Bloomberg via Getty Images)

 STAP細胞は当初、iPS細胞などにはない胎盤への分化能力を持つことから、受精卵に近い究極の“万能細胞”だと注目された。だが、それもあくまで未検証の仮説。事実、小保方晴子ら研究チームは「STAP」の名付けに際し、多能性を意味する「pluripotency」の頭文字を取った。にもかかわらず、理研の発表はSTAP細胞の能力と利点を強調し、メディアに迎合する道を選んだ。

 「論文発表だけでは役所に研究の意義を理解してもらえない。分かりやすい数字が要る」

 理研と同じ文部科学省所管の研究所で広報を担当した経験を持つ研究者は、こう話す。ひと月に1度、研究所の成果に関する新聞報道をまとめて文科省の担当課に送ることが、広報の欠かせない仕事の一つだったという。

 毎年夏、各省庁が翌年度の政策に必要な予算を財務省に申請する概算要求が近づくと、役所を飛び交う文書がある。通称「ポンチ絵」。事業の意義や計画、予算要求額などを1枚の紙に単純化し、外部各所に説明するためのものだ。前出の研究者は、「文科省の担当者が限られた資料で省上層部や財務省を説得するには、論文や新聞報道、特許の数などに頼らざるを得ないのだろう」と語る。

 だが、役所側の言い分は微妙に異なる。「財務省は事業内容について詳細な情報を求めてくるし、我々も時間をかけて説明する。単純化が必要になるのは、15秒しか集中力が続かない政治家たちと、ワンショットですべてを切り取ろうとするマスメディアに説明する時だ」。文科省幹部は苦虫を噛み潰す。

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「シリーズ検証 STAP細胞、失墜の連鎖」のバックナンバー

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「メディアに迎合する道を選んだ」の著者

林 英樹

林 英樹(はやし・えいき)

日経ビジネス記者

大阪生まれ。神戸大学法学部卒業後、全国紙の社会部記者として京都・大阪で事件を取材。2009年末に日本経済新聞社に入り、経済部で中央省庁担当、企業報道部でメディア・ネット、素材・化学業界などを担当。14年3月から日経BP社(日経ビジネス編集部)に出向し、製造業全般を取材している。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

田中 深一郎

田中 深一郎(たなか・しんいちろう)

日経ビジネス記者

日経新聞科学技術部、証券部を経て、2012年4月より日経ビジネス記者。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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名和 利男 サイバーディフェンス研究所上級分析官