• BPnet
  • ビジネス
  • IT
  • テクノロジー
  • 医療
  • 建設・不動産
  • TRENDY
  • WOMAN
  • ショッピング
  • 転職
  • ナショジオ
  • 日経電子版

「スターばかりもてはやすな」

挫折から見えた真実

2014年8月22日(金)

  • TalknoteTalknote
  • チャットワークチャットワーク
  • Facebook messengerFacebook messenger
  • PocketPocket
  • YammerYammer

※ 灰色文字になっているものは会員限定機能となります

無料会員登録

close

 「イチローみたいな人のことばっかり、取材してますよね」。数年前、ある農業法人のトップに言われたことが、ずっと心にひっかかっていた。規模を拡大している農業経営者を取材し、変わりつつある農業を明るく伝える――。冒頭のセリフは、そうした取材姿勢への痛烈な批判だ。「スターばかり取り上げて、真実をゆがめるな」という意味だ。その彼に、久方ぶりに会ってみた。

「みんなが豊かになるのは無理」か?

 農業に関するメディアの報道や一部の識者の分析は、ずっと単純な二分法に縛られ続けている。「躍進する農業法人と、閉鎖的な農協システム」「努力する専業農家と、惰性に流される兼業農家」。言うまでもないが、多くの記事は前者を肯定し、後者を否定するという構図にある。

 今回、匿名でインタビューに協力してくれた人は、約200の農家から野菜を集荷している農業法人の元トップであり、ふつうの図式で言えば、肯定の対象になる。だが彼は「農業でみんなが豊かになるのは無理」と訴える。これを後ろ向きの悔恨とみるべきだろうか。

 彼の家は、農薬や肥料を農家に売るのが本業。関東地方では有力な資材販売会社だ。だが日本の農業が衰退するのに伴い、資材ビジネスも先細りになる恐れが出てきた。そこで農家から野菜を買い取り、販売することで、事業を双方向にしようと考え、農業法人を立ち上げた。いまから十数年前のことだ。

 発想はけして悪くはない。もともと家業はたんなる資材販売ではなく、独自の肥料を使った生産方法も指導していた。かれはこの農業法人を10年ほど経営したあと、事情があって3年前に現場から離れた。いまは途上国で農業を指導する国際協力の仕事をしている。

 「十数年、農家と接して来て何を感じたか」。これが、数年ぶりに会って聞きたかったことだ。答えはいたってシンプルだった。「みんな、自分の子どもに農業をさせようとは思っていない。跡継ぎがいるのは10軒に1軒。このままだと農家はいなくなる」。

 いつもなら、こうした農家は努力が足りない「否定すべき存在」として片付けてしまったかもしれない。だが、今回の取材は彼らが息子に未来を託そうとしない理由を考えるのが目的だ。そこで重ねて「どうしてなのか」とたずねた。

 「農業に参入する企業は『既存の農家がもうからないのは、やり方がまずいから』と考える。でも、参入した企業は軒並みうまくいってないじゃないですか」。これが、まず彼が言いたいことだった。彼自身、農業法人の代表として大手企業といろんな交渉にのぞんできた。そのころ彼が取材でくり返した言葉が、「企業は上から目線すぎる」だった。

設備がよくても簡単には利益が出ない

コメント6

「ニッポン農業生き残りのヒント」のバックナンバー

一覧

「「スターばかりもてはやすな」」の著者

吉田 忠則

吉田 忠則(よしだ・ただのり)

日本経済新聞社編集委員

1989年京大卒、同年日本経済新聞社入社。流通、農政、行政改革、保険会社、中国経済などの取材を経て2007年より現職。2003年に「生保予定利率下げ問題」の一連の報道で新聞協会賞受賞。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

日経ビジネスオンラインのトップページへ

記事のレビュー・コメント投稿機能は会員の方のみご利用いただけます

レビューを投稿する

この記事は参考になりましたか?
この記事をお薦めしますか?
読者レビューを見る

コメントを書く

ビジネストレンド

ビジネストレンド一覧

閉じる

いいねして最新記事をチェック

日経ビジネスオンライン

広告をスキップ

名言~日経ビジネス語録

機械を売るんじゃなくて、電気が欲しい方に電気が起きる装置をソフトも含めて売るビジネスをしていこうと。

田中 孝雄 三井造船社長