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日本人の「大企業病」が起業を阻んでいる

2014年8月25日(月)

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 「我々日本人は、もう絶対にイノベーションを起こすことはできない。グーグルのような企業も生まれない」。このような台詞を、よく会議で耳にします。日本人は、イノベーション精神をなくしてしまい、ヒット商品や新規企業をつくることができない、と言われているのです。

 このような厳しい自己批判を、私はとても残念に思います。それは、この考え方が悲観的なだけでなく、間違っているからです。今の日本人にイノベーション精神がないと言うのが、そもそもの勘違いです。日本という国は、ずっと前から世界におけるイノベーションリーダーの1つです。

 そして、今も昔も、日本のイノベーションのほとんどは、大企業の中で起きています。また、現在日本の重要なイノベーションの多くは、消費者向け商品にではなく、その中間製品の、素材や化学の部分で活用されています。それでも、これらは立派なイノベーションなのです。

日本は、今も昔もイノベーティブです

 更に、日本にグーグルのような企業がない、というのも正解ではありません。そもそもグーグルは世界を見ても特異な企業なので、比較対象としては適していません。そして日本には、力強くて若い企業がたくさんあります。例えばソフトバンクとその連結子会社であるヤフー・ジャパン、楽天、DeNA(ディー・エヌ・エー)、グリーなどのほか、日立グループなど大企業グループに所属するハイテクな子会社もあります。

 研究開発やイノベーションというのは、規模や影響力よりも「経済の中のどこで起きるか」という点において、国ごとに大きく違っています。米国では、破壊的な技術の多くが、大企業や新しく創立したスタート・アップ企業を通じて起きます。それに対し日本では、遅くとも1960年代からずっと、大企業やその子会社です。日立製作所、ソニー、ブリヂストンなどの研究部門は、世界的にも有名です。

 大企業の中で研究開発を行う体制が取られることには、多くの理由が挙げられます。その中で1番大きな理由は、高度成長期の日本の主力銀行中心型の間接金融システムが、大企業内ベンチャーを容易にする一方で、新興企業の研究開発を困難にしたためです。元々、米国を追いかけていた時代の日本では、多くの研究開発が消費者向けでした。素早い投資の見返りが約束され、かつ税法が研究開発費の償却を可能にしていたため、大企業内での研究開発が財務的に魅力的だったのです。

ドイツでは大企業の社長は「うさんくさい」!?

 この体制の結果、大企業が最先端技術による研究開発を独占する半面、中小企業がこれに携わることがほとんどありませんでした。今現在も中小企業は大企業の下請けとして尽力し、「ものづくり」や「改善」の力で評価されてはいるのですが、「下請け」という言葉から、本音ベースでの上下関係がはっきり分かります。また、ほとんどの日本人は、中小企業を「イノベーションの担い手」というより「サービスの提供者」とみなしています。

 それに、スタート・アップ企業の経営に携わることは、特に起業者の義理の両親など親類縁者から「変わっている」とか「変」とか言われたりするので、肩身の狭い思いをしてしまいます。しかし海外と比較すると、このような経済の見方は少々特殊なのです。

 ドイツは、日本と正反対です。多くのドイツ人は大企業を必要悪と見なしており、大企業の社長は、権力が強くお金持ち過ぎるため、かえってうさんくさく思われているはずです。ドイツ人が尊敬しているのは、「ミッテルシュタント」(中規模の会社)です。この、「中型企業」の定義は少しあいまいで、従業員数1000人以上の企業もいくつかこの枠組みに含まれているのですが、ドイツ人はこのミッテルシュタントの企業たちこそ、経済、イノベーション、そして雇用を支える、ドイツ経済の真のエンジンであると信じて尊敬しています。

コメント5件コメント/レビュー

あれこれ揚げ足をとっても仕方ないでしょう。海外の研究者にしては、とても丁寧に調査研究しているし、論も慎重に進めている点があり(もっと暴論を書くことは容易)、中身も大体は賛同できます。が、問題は実践・実現だとすれば、今日「個人保証」が必ずしも絶対でなくなった状態で、なお起業を阻む環境があるわけで、根気よく環境改善努力するしかない。個別各論も一つ一つ論じるしかない。(2015/10/26 15:09)

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「日本人の「大企業病」が起業を阻んでいる」の著者

Uシェーデ

Uシェーデ(うりけ・しぇーで)

米UCサンディエゴ大学教授

日本型経済・経営および経営戦略論の権威。主な研究領域は、日本を対象とした企業戦略、組織論、金融市場、政府との関係、企業再編、起業論など。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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いただいたコメント

あれこれ揚げ足をとっても仕方ないでしょう。海外の研究者にしては、とても丁寧に調査研究しているし、論も慎重に進めている点があり(もっと暴論を書くことは容易)、中身も大体は賛同できます。が、問題は実践・実現だとすれば、今日「個人保証」が必ずしも絶対でなくなった状態で、なお起業を阻む環境があるわけで、根気よく環境改善努力するしかない。個別各論も一つ一つ論じるしかない。(2015/10/26 15:09)

バブル崩壊時、リーマンショック時、ベンチャー企業の社長が沢山交通事故死したことを知らないのでしょう。全ては個人保証により、会社の利益が無くなると、突然家土地屋敷を差し押さえられ、一族郎党が路頭に迷うのです。そのため覚悟の自殺であることは関係者は皆知っています。こういった事実を知っている人は絶対に起業など行いません。命と引き換え(生命保険)の金融しかないのが実情なのです。大企業が保証するベンチャーは、新規起業とはまったく異なり、分社化と同じです。(失敗しても死ぬ必要は無い) 事ほど左様に日本だけにある個人保証制度が外国並みに無くなれば、起業ブームになるでしょう。勿論失敗者も沢山出ますが、自殺者はでませんね。 政府が音頭を取っても、個人保証なしは、超優良企業しか進みませんね。これが現実です。(2014/08/27)

著者のような専門家なら既に研究されていると思いますので、日本の「保証人制度」、特に融資を受ける際の「連帯保証人制度」「企業代表者の個人保証」についての見解を是非伺いたく思います。個人的にはこれらが日本の起業率を押し下げている大きな要因と思っています。事業につまづいたら親しい人に借金を押し付けた挙句死ななければいけない、というプレッシャーの中で誰が起業したいと思うでしょうか?逆に米国やドイツではそのような制度や社会的圧力はないのでしょうか、興味があります。(2014/08/26)

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ジェニー・ダロック 米ピーター・F・ドラッカー伊藤雅俊経営大学院学長