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経営コンサルタントが極右だった時代

荒木東一郎とは何だったのか

2014年8月27日(水)

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君は石をぶつけられても仕事ができるか

 ある社長は、指導を依頼していた経営コンサルタントを呼んだ。その年、その社長の会社は約6000万円の赤字だった。これは経営コンサルタントにも責任があるのではないか。すると、経営コンサルタントは、たしかにそうだと頷いて2000万円の支払いを承諾した。

 翌年、その会社は2億円の黒字になった。経営コンサルタントは社長に、この成果は自分のおかげでもあるのではないかと、今度は逆に約6600万円の請求書を提示した。社長が躊躇していると、経営コンサルタントは「男がすたる」と伝え、社長はそれを支払った。

 その経営コンサルタントは成果にひたすらこだわった。資料を提示するだけで、なんら具体策を出せない口先コンサルタントを嫌悪し、どこまでも現実的施策と定量的結果を追い求めた。

 しがらみや習慣、勘や経験に支えられた組織運営を嫌い、どこまでも科学的管理法を突き進めた。春闘や労働争議も、交渉による妥協でなく、論理と計算を優先し、科学的に解決できると信じた。労働組合からの反発は大きく、争議の途中で組合員から石を3発も投げられ、石が当たった額に傷跡が残り続けた。しかし、彼は額から血を流し顔じゅうが赤く染まっても、労働組合にたいして演説をやめなかった。その筋の刺客が、労働争議から身を引くよう、短刀をもって妻と娘のもとに来訪しても、彼の働きを止めることはできなかった。

 彼――。この経営コンサルタントとは、日本の経営コンサルタント第1号・荒木東一郎氏であった。前述の社長とは、日東電気工業の皆川利男氏であり、氏が流血した労働争議の場面はヨコセン(現・三菱重工業横浜造船所)であった。

 前回、私は当連載で一倉定氏をとりあげた。一倉氏が社長専門コンサルタントとして、精神的な支えを形作ったとすれば、この荒木東一郎氏は能率技師として技術的・論理的な側面からコンサルタントの礎を形作ったひとだった。

 一倉定氏、ならびに荒木東一郎氏の両名を聞いた経験のあるひとは少ないだろう。しかし、現代の経営コンサルタント像を作り上げた意味でもぜひ紹介したいと思う。この2人を現代に紹介するのは、もはや私しかいないと思うし、夏休みの特別編として連載テーマを逸脱できたこともある。それに、先哲のほとばしる情熱から、現代問題のヒントを見つけ得ると思うからでもある。

荒木東一郎という衝撃

 1895年に東京神田で生まれ、1977年に鬼籍のひとになるまでの83年間。氏はその大半を経営コンサルタントとして過ごし、日本企業の育成に血眼になった。キャリアは藤倉電線の研究主任からはじめ、渡米しタイヤ工場で「モンキー」といわれながら当時の最先端であったアメリカ合理主義を経験した。その後、インダストリアルエンジニアリングと、フレデリック・テイラーが提唱していた科学的管理法に心酔。生産管理を通じて日本を成長させようと経営コンサルタントに転身する。指導先は、小糸製作所、立石電機(現・オムロン)、古河電気工業、中央発條、岡谷鋼機、明治製菓、東光、松尾電機と、氏の歴史はまさに日本のモノづくりの歴史そのものだった。

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「経営コンサルタントが極右だった時代」の著者

坂口 孝則

坂口 孝則(さかぐち・たかのり)

調達・購買コンサルタント

大阪大学経済学部卒業後、電機メーカー、自動車メーカーに勤務。原価企画、調達・購買、資材部門に従業。調達・購買関連書籍23冊を上梓。2010年、調達・購買コンサルタントとして独立。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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