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「聖なるコメ」と決別を

最強農協が挑む「トマト改革」

2014年8月29日(金)

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 日本の農業は高齢化が極限に達し、これからその構造が大きく変わろうとしている。残った担い手たちがどんな経営をするかは、扱う品目や狙う市場の特性によって様々なバリエーションがあるだろう。だが日本の農業全体を見わたせば、共通したある課題が浮かび上がる。日本の農業と農政をしばってきた「聖なるコメ」という発想からの脱却だ。

 8月上旬に秋田県大仙市の秋田おばこ農業協同組合(JA秋田おばこ)を訪ねた。取材の目的は、日本でもっとも有力なコメの輸出基地としての取り組みを聞くことにあった。それはそれで十分に面白かったのだが、取材に応じた常務理事の大友忠は話の流れでふと違うテーマに触れた。「じつは田んぼにトマトハウスをつくってるんです」。

田んぼにトマトハウスを

 話題が稲作の未来に及んだときだった。政府が2018年をめどに生産調整(減反)をやめることを決めたことで、米価が今後さらに下がると予想されている。民主党時代に減反に協力した農家に出していた補助金も、同じ時期に廃止になる。大友は「暗い話題ばかりだが」と前置きしたうえで、「5年先を見すえ、コメ一本ではない農業の姿をつくりたい」と語り始めたのだ。

 百聞は一見にしかず。現地を案内してもらった。一面に広がる水田のなかに、銀色に光るハウスが見えてきた。敷地面積は6ヘクタールで、そのおよそ半分の面積にハウスを建てる。棟数は104になる。

 そのうち6棟はすでに完成し、トマトの栽培が始まっていた。「おおっ、実がついてきているね」。できたばかりのハウスに入ると、大友はうれしそうに笑った。まわりの土地でも、新しい棟の骨組みがつぎつぎに建てられている。全体がフル稼働したときに想定している売り上げは1億2000万円。「ここで50人の雇用が生まれる」という。この言葉は、稲作に偏った農業のあり方を見直すうえで重い意味がある。

 ハウスの建設などにかかる事業費5億円は、県が50%、市とJA秋田おばこがそれぞれ25%ずつ負担する。できた施設は地元の2つの農業法人に10年契約でリースし、トマトを栽培してもらう。大手ハンバーガーチェーンなど4つの売り先は、JA秋田おばこが見つけてきた。販路を確保しつつ生産を始め、さらに規模を大きくしていくのは、優れた農業経営に必須の条件だ。

 ここで強調しておきたいことがある。一般のメディアはよく、農業を「躍進する農業法人と遅れた農協」という対立の構図でみる。農業取材を始めたころは、筆者もそうしたステレオタイプの二分法で考えがちだった。だがその見方は間違っていた。まともな農業法人もあれば、そうでないところもある。農協もまたしかり。そしてJA秋田おばこのように、法人を育成する農協も少なくない。

水田地帯でJA秋田おばこの栽培ハウスの建設が進む(秋田県大仙市)

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「「聖なるコメ」と決別を」の著者

吉田 忠則

吉田 忠則(よしだ・ただのり)

日本経済新聞社編集委員

1989年京大卒、同年日本経済新聞社入社。流通、農政、行政改革、保険会社、中国経済などの取材を経て2007年より現職。2003年に「生保予定利率下げ問題」の一連の報道で新聞協会賞受賞。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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