電力システム改革が間近に迫っている。2016年に家庭向け(低圧部門)を含め、電力の小売り事業が全面的に自由化され、2018年には発電事業と送配電事業が分離される。すでに新電力(PPS)の届け出は300社を超え、電力ビジネスへの参入意欲が急速に高まっている。このシリーズでは、電力システム改革の最新の動きと今後の動きを4回連載で解説する。1回目の本稿では、小売り全面自由化でキープレイヤーと目されるソフトバンクと楽天の戦略に迫る。

今年6月、ソフトバンクグループで再生可能エネルギー事業を展開するSBエナジー(東京都港区)は、静岡市で「ソフトバンク静岡葵ソーラーパーク」の竣工式を開いた。SBエナジーにとって12カ所目のメガソーラー(大規模太陽光発電所)で、同社の稼働済みのメガソーラーは、これで出力70MWに達した。計画中も含めると、300MW近くになる。
「再エネ事業者のプラットホームになる」
「自社のメガソーラーだけでなく、各地の再生可能エネルギー発電事業者を連携していくプラットホームの役割を果たしていきたい」。藤井宏明・SBエナジー副社長は竣工式の記者会見で、こう今後の事業戦略を語った。「メガソーラーの電力を活用し、次にどんな電力事業に乗り出すのか」と聞かれた時の答えだ。藤井氏は、ソフトバンクグループで電力小売りを担うSBパワー(東京都港区)では、社長を務める。
その後、ソフトバンクは7月1日に法人向けの電力小売り事業を開始すると発表した。SBパワーが新電力(PPS)として、再生可能エネルギー由来電力を中心に、全国から電力を調達し、通信事業で取引のある法人顧客などに供給する。電力の調達先は、SBエナジーの運営するメガソーラーを主体に外部からも調達する。関東エリアから、順次全国に販売地域を拡大する。初年度に200~300件の顧客を開拓するという。
これは2016年以降の電力小売り全面自由化をにらんだ動きである。電力販売の対象顧客にソフトバンクの携帯電話を利用する個人客を取り込むことが可能になる。
「単なる安売り競争はしない」
「ソフトバンクが電力小売り、通信とセット割引」――今春、新聞の一面にこんな見出しが躍った。同社の電力参入では、低価格戦略でシェア奪う、といったイメージを持たれることが多い。しかし、「通信の顧客に対して電力も販売するのは重要な事業モデルだが、再生可能エネルギーによる電力を主体に販売するのが基本的な戦略。単なる安売り競争はしない」と、藤井SBパワー社長ときっぱりと言う。
むしろSBパワーの狙いは、「再エネ事業者のプラットホーム」なのだ。この場合の「プラットホーム」とは、電力業界の用語で「バランシンググループ(代表契約者制度)」と言われるもので、すでに実例がある。これは複数の新電力がグループを作り、代表する事業者がグループ全体で電力の需要と供給を一致させる仕組みだ。エナリスのほか、新電力大手のエネット(東京都港区)やF-Power(東京都港区)などが、バランシンググループの代表契約者として、電力の「バランシング」(需給調整)を担っている。
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