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「我々もMURATAになりたい」

買収された海外企業が村田製作所に申し出た訳

2014年9月19日(金)

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機長に扮して挨拶する薗田聡上席執行役員

 「社名をMURATAに変えてください」

 こう申し出たのはフィンランドの企業、VTIテクノロジーズ(現ムラタ・エレクトロニクス)である。MURATAは村田製作所だ。村田製作所がVTIを買収したところ、なんと買われたVTIのほうから社名を変えて欲しいと言ってきた。

 村田製作所は2011年10月10日にVTIを買収する契約を締結、買収手続きを2012年1月末に完了した。VTI側からのこの申し出があったのは、村田製作所の幹部がM&Aの手続きを詰めるためにVTIを訪れたときだ。

 「いやあ、驚きました。VTIは車載ESC(横滑り防止装置)に使われるMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)センサーで世界シェアの半分近くを持つ企業です。市場の認知度はあるし、社員のメンタリティという観点からもVTIの文字を社名に残すべきだと思っていました。彼らもそれを熱望しているだろうと。ですから社名はVTIのまま、気持ちよく村田製作所グループに入ってもらうつもりでした」。

 M&Aの総責任者を務めた薗田聡上席執行役員デバイス事業本部長は、VTIの申し出を聞いたときの驚きをこう振り返る。確かに、買った会社が買われた会社に対して社名変更を求めることはあっても、逆は無い。

 筆者自身、以前在籍していたPwCコンサルティングが2002年、IBMに買収された経験を持つ。IBMという社名が大変なブランドであることは知っていたものの、ビジネスコンサルティングに関してはPwCのブランドの方がはるかに上だ、いくらなんでも「社名をIBMに変更せよ」などとIBMは言ってこないだろうとたかをくくっていた。

 しかし、何の躊躇もなくIBMブランドとなった。その後の経緯を考えるとIBMに変えたことは正解だったと思うが、少なくとも買収直後、「社名をIBMに変えてください」とPwC側から依頼する発想はまったくなかった。むしろ、ある意味、「買われた側」として、単なる社名の変更にとどまらない感情的なもやもやがあった。

 ところが「日本企業」に買収された「世界のVTI」が自ら社名を変えてほしいとリクエストしてきたわけだ。薗田氏が驚いたのはもっともである。

「機長の服を着てください」

 2012年1月末にM&Aの法的手続きが終わり、フィンランドで記念式典が3月9日に開かれた。日本から薗田氏を筆頭に10名の村田製作所社員が参加した。VTIを訪れた薗田氏は、先方の女性社員から航空機パイロットの衣装を手渡された。いぶかしがる薗田氏を横目に彼女は説明した。

 「今日は新会社が離陸する日です。薗田さん、あなたはこの飛行機の機長です。この服に着替えてください」。そして、衣装とともに、なにやらメモが手渡された。「これを皆の前で読んでください」

 手渡された紙には、「アテンションプリーズ、こちらは機長の...」からはじまる、いわゆるコックピットにいる機長が乗客へ語りかける形式でのメッセージが書かれている。若干驚いた顔でその紙を読む薗田氏を前に彼女は楽しそうに笑っている。

 「おもしろい。やろう」。薗田氏は海外での生活が長く、こうしたゲームが嫌いではない。いやむしろ好きである。

 機長からのメッセージというアイデアを出した女性は、カティ・マイヨさん。フィンランドと日本の双方から3名ずつで構成していたPMI(Post Merger Integration)チームの一人だ。彼女の担当はコミュニケーション。両社の心の壁を取り払い、統合への機運を高めるのがミッションだった。

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「「我々もMURATAになりたい」」の著者

金巻 龍一

金巻 龍一(かねまき・りゅういち)

GCA マネージングディレクター

M&Aアドバイザリーの一環として、日本企業のグローバル化と成長戦略を「事業統合シナジーの創出」という観点から支援する。慶應義塾大学特別招聘教授。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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名和 利男 サイバーディフェンス研究所上級分析官