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第1回:装置は自作で部材は再利用、語るも涙の開発課員時代

  • 仲森 智博

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2014年10月8日(水)

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赤崎勇・名城大学教授、天野浩・名古屋大学教授、中村修二・米カリフォルニア大学教授が2014年のノーベル物理学賞を受賞した。ここでは、中村氏が窒化ガリウム(GaN)系青色LEDの研究に着手し製品化にこぎ着けるまでの開発ストーリーを紹介した1995年1~3月当時の日経エレクトロニクスの記事を基に、2009年「日経テクノロジーオンライン」に掲載した記事を再掲載する。

 1990年代半ばに人の身長を超えるような超大画面のフルカラー・ディスプレイを実現可能にし、そして2000年前後にはケータイの液晶画面のカラー化に貢献した高輝度青色発光ダイオード(LED)。その技術は青色レーザー開発の礎にもなり、その実用化がハイビジョン番組を録画できるBlu-rayを可能にした。赤色や緑色のLEDと組み合わせて様々な色を作り出せる高輝度青色LEDの行く手には、さらに、白熱電球や蛍光灯に取って代わる次世代省エネ照明の巨大市場が見えている。

 高輝度青色LEDの開発には日本のグループが大きく貢献している。GaN LEDの研究段階では名古屋大学の赤崎勇教授(当時、現在は名城大学特任教授)のグループの研究が大きな成果を上げた。その後の実用化と高輝度化の段階では、日亜化学工業の中村修二氏(当時、現在は米University of California Santa Barbara校の教授)が大きな役割を果たしている。本連載では、中村氏がGaN系青色LEDの研究に着手し製品化にこぎ着けるまでの開発ストーリーを紹介した1995年1~3月当時の日経エレクトロニクスの記事を再掲載する。関連記事として最終回に、同誌が1995年5月8日号に掲載したGan系青色LEDの発明についての記事を再掲載する。(日経テクノロジーオンライン

 高輝度青色発光ダイオードの開発物語を4回連載で掲載する。今回は、開発者である中村修二氏が日亜化学工業に入社してから青色発光ダイオードの研究に着手するまで。入社以来中村氏は、金属Gaをはじめ、InP、GaAs、GaAlAsなどの単結晶材料や多結晶材料の開発を手がけてきた。経費節約のため、装置から部材の加工まですべて自分でやった。開発は成功し、事業化にこぎつけたが売れない。そんな焦燥感のなか、事業化できれば必ず売れる青色発光ダイオードを次のテーマに選ぶ。

写真1 日亜化学工業の阿南本社

 徳島県阿南市に本社を置く日亜化学工業注1)は、地元ではちょっと名の知れた会社だった。3週間もの長い夏休みを実施していたためである。従業員は、この長期休暇を阿波踊りの練習にあてる。そして本番の阿波踊りには、「日亜連」なる踊り手集団を送り出す。

注1)日亜化学工業は、徳島県阿南市に本社を置く化学品メーカである。従業員数は1994年4月現在640名、売り上げは1993年1月~1993年12月で167億円。主な製造品目は、CRTや蛍光灯などに使う蛍光体材料で、売り上げの8割~9割を占める。このほか、化合物半導体材料や、真空蒸着材料、スパッタリング・ターゲット、液晶パネルのバックライトなどに使うEL(electroluminescent)ランプなども製造する。設立は1956年12月。中村氏が入社した1979年当時は、売り上げが約40億円、従業員数は200名程度だった。

 そんな日亜化学工業が一挙、世界に名を売ることになったのは、1993年の暮れである(表1)。輝度1cdの青色発光ダイオードを開発、量産に乗り出したのだ。「実現は21世紀」とも言われていた高輝度青色発光ダイオードが、あっけなく実用期を迎えてしまった注2)

表1 青色発光ダイオードの開発過程

注2)「青色は可視LEDのなかで高輝度化が最も難しいといわれており、実際の開発も遅れているが、2000年での1cd到達を目指してあらゆる可能性を追求している」との記述が、日本電子機械工業会(EIAJ)電子ディスプレイ・電子管業務委員会電子ディスプレイ2000年研究会が1993年7月にまとめた『電子ディスプレイ産業の2000年ビジョンに関する調査研究報告書』のなかに見られる。

 この分野の技術者や研究者は、一様に驚き、ショックを受けた。この快挙をものにしたのが、同分野で長年研究を進めてきた国内外の大学でも、大手エレクトロニクス・メーカでもなく、地方の中堅化学メーカだったことに2度驚いた。そして「夏休みの日亜」は、「青色発光ダイオードの日亜」になった。

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