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第2回:失意の帰国、ゼロからの出発、装置の改造に明け暮れる日々

  • 仲森 智博

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2014年10月9日(木)

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赤崎勇・名城大学教授、天野浩・名古屋大学教授、中村修二・米カリフォルニア大学教授が2014年のノーベル物理学賞を受賞した。ここでは、中村氏が窒化ガリウム(GaN)系青色LEDの研究に着手し製品化にこぎ着けるまでの開発ストーリーを紹介した1995年1~3月当時の日経エレクトロニクスの記事を基に、2009年「日経テクノロジーオンライン」に掲載した記事を再掲載する。

 高輝度青色発光ダイオード開発物語の第2回目。前回は開発者の中村修二氏が入社してから青色発光ダイオードを研究テーマに選ぶまでだった。今回は研究着手から、材料として選んだGaNの膜成長に成功するまでを追う。青色発光ダイオードを研究するためには、発光層となる膜の結晶成長技術をまず習得しなければならない。このために米国に行く。しかしここでも、装置の作製で1年間を浪費する。帰国しても装置の作製、改造を続ける日々が続く。長い苦労の末、やっと最初の成果が出るのだが…。

 1988年3月、中村修二氏はたぎる思いを胸に秘めつつ米国フロリダに向かう飛行機に乗り込んだ。研究員として1年間、フロリダ大学(University of Florida)に派遣されることが決まったのだ(表1)。

表1 青色発光ダイオードの開発過程

 話のキッカケは、徳島大学の先輩である酒井士朗氏(現徳島大学 教授)を訪ねたことだった。青色発光ダイオードを作るためには、青色発光ダイオード用の単結晶膜を形成するところから始めなくてはならない。この手法としては、MBE(molecular beam epitaxy)法注1)とMOCVD(metal organic chemical vapor deposition)法注2)がある。迷わずMOCVD法を選んだ。MBE装置は数億円と高く、とても買ってもらえそうにない。

注1)MBE(molecular beam epitaxy)法は、基板上に単結晶膜を成長させる手法で、気相成長法の一種。高真空中に導いた原子(分子)のビームを制御しながら基板に照射し、原子を堆積させる。いわば高精度な真空蒸着技術である。Siや、GaAsなどの化合物半導体を使ったデバイスを作る際に使われる。

注2)MOCVD(metal organic chemical vapor deposition)法は、基板上に膜を堆積させるCVD(chemical vapor deposition、化学蒸着)法の一種。OMCVD(organometal CVD)法とも呼ぶ。CVD法は、堆積させたい物質を含むガス、あるいはこのガスと不活性なガスとの混合気体を加熱した基板上に流し、熱分解、酸化還元、置換などの化学反応を起こさせることによって、目的の物質を基板上に生成、堆積させる方法である。このうち原料のガスとして有機金属(有機物質が直接金属と結合した化合物、organometal)を使う方法をMOCVD法と呼ぶ。GaAsなど化合物半導体の単結晶膜を基板上に成長させる際に広く使われる手法である。

 選んだものの、中村氏にとってMOCVD法は初体験である。まずは勉強、ということで、当時MOCVD法の研究で名を上げていた酒井氏に教えを請うことにした。このとき酒井氏は、すでにフロリダ大学に行くことが決まっていた。「せっかくの機会だからいっしょに行かないか」。願ってもないチャンスである。ただし、会社が行かせてくれるかどうか。

 ダメでもともと。言うだけ言ってみよう。酒井氏にも同席してもらい、会長と社長に米国行きを打診した。意外にも、その場でフロリダ行きが決まってしまった。

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