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国論分裂が始まった韓国

「戦時作戦統制権」を読者と読む

2014年10月30日(木)

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 米中双方から「どっちに付くのか」と迫られる韓国。ついに、国論が分裂し始めた。

韓国を疑い続けた米国

米国と韓国が「戦時の作戦統制権」の返還を無期延期すると聞きました。「統制権」とは聞き慣れない言葉です。

鈴置:韓国軍は米軍が指揮しています。その状態を指して「韓国は自国の軍の作戦統制権を米軍に委ねている」と表現します。

 1950年に朝鮮戦争が勃発した時、韓国軍は極めて脆弱でした。このため韓国は国連軍に統制権を渡し、その指揮下で戦ったのです。戦争が終わった後も国連軍、後に米軍が韓国軍の統制権を握り続けました。

 韓国軍の力不足は続きましたし、米国が韓国という国を信用しなかったためでもあります。米国は李承晩(イ・スンマン 1948-1960年)、朴正煕(パク・チョンヒ 1963―1979年)の両政権が軍事力で北を統一する野望を持っていると見なしていました。

 韓国軍を掌握しておかないと勝手に戦争を始められてしまい、それに巻き込まれると米国は懸念したのです。

 結局、民主化後の1994年に、平時の作戦統制権だけ韓国に返還しました。「豊かになり失うものができた韓国はもう、戦争を引き起こさないだろう」との判断も、米国にはあったと思います。

ささやかれた「同盟打ち切り」

 そして盧武鉉(ノ・ムヒョン)政権(2003-2008年)が「戦時」の統制権まで取り返そうとしたのです。左派で反米を売り物に当選した盧武鉉大統領は、就任すると「戦時の作戦統制権を持ってこそ主権国家」と主張、米国に返還を要求しました。

 米国は驚きました。統制権を韓国に返還すれば、韓国軍が独自で作戦を立てることになります。でも、韓国軍にそんな力はありません。北朝鮮の情報ひとつだって、米軍の衛星や偵察機で収集しているのですから(「『核攻撃の対象』と中国に脅される朴槿恵」参照)。

 米国は相当に悩んだようですが、結局、2006年9月16日の米韓首脳会談で返還に基本合意します。翌2007年2月に、返還時期を2012年4月と定めました。

 当時、米韓関係は最悪でした。盧武鉉政権の執拗な反米政策の結果です。米国の国防関係者の間では「同盟打ち切り」までささやかれていました。

 米国は、もし統制権を返還しないと盧武鉉政権が「そら見ろ、やはり米国は韓国を植民地と見なしているのだ」と騒ぎ立てると懸念して、返還に応じた部分もあったといいます。

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「国論分裂が始まった韓国」の著者

鈴置 高史

鈴置 高史(すずおき・たかぶみ)

日本経済新聞社編集委員

1977年、日本経済新聞社に入社。ソウル特派員(87~92年)、香港特派員(99~2003年と06~08年)などを経て、04年から05年まで経済解説部長。02年度ボーン・上田記念国際記者賞を受賞。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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