買ったおもちゃからフォローされる4歳児
あなたは子どもの部屋に入った。そこでは子どもが、仮面ライダーの変身ベルトやら、妖怪ウォッチやら、トッキュウジャーのフィギュアやらをめちゃくちゃに散乱させている。足の踏み場すらない状況だ。
あなたは叱り飛ばす。「整理整頓しなきゃ、どこに何があるのか分からないだろ!」。しかし、子どもは平然としている。「どんなものでもスマホで5秒以内に探せるよ」。「じゃあ、仮面ライダードライブのシフトカーは?」。「はいよ」。「む。じゃあ、アンパンマンの人形は?」。「これだよ」。「え、そ、そうか。じゃあ、だいぶ前に藤子F不二雄ミュージアムで買ったロボケット人形は分からないだろ」。「あ、それなら、これね」。あなたの子どもは、どんなものでもすぐさま取り出した。
「RFIDで管理しているから、どこにあってもすぐ分かるよ。パパ、あのね。もう整理整頓するっていうのが昔のパラダイムなんだよ。いまはパソコンのファイルを検索するのと、モノを探すのは同じ意味なんだよ」
子どもは、おもちゃの背後につけていたタグを見せてくれた。ここにそれぞれのID情報が埋め込まれているらしい。しかも子どもは、もっと驚くことを教えてくれた。
「ほら、このおもちゃね。せっかく買ってくれたけれど、半年ほどこの部屋での位置情報が変わっていないでしょう? だからね。このおもちゃはお友だちに売ることにしたんだ」
「そんなの、お前はずっと監視していたのか?」。驚くあなたに子どもはさも当然かのように答える。「違うよ。このおもちゃがボクのTwitterをフォローしてくれていてね。このおもちゃを欲しがっている近くのお友だちを探してくれて、ボクにツイートしてくれたんだ」。「なんと?」。「えっと『売ったほうがどちらにとってもハッピーだよ』って」。「お前、何歳だっけ?」。「この前4歳になったよ。フォロワーのおもちゃからも誕生日のメッセージをもらったよ」。
あなたはクラクラしながら子どもの部屋をあとにした――。
とまあ、もちろんこれは劇画調に書いた小説にすぎない。しかし、これは単なる絵空事として終わらないかもしれない。すべてのモノが電子空間でつながったとき、あなたのTwitterやFacebookをフォローするのは、身近な人たちではなく、身近なモノ(おもちゃや冷蔵庫や洗濯機など)になるかもしれない。
500億台のスマートデバイスがつながる2020年
東京オリンピックが2020年に開催される。この2020年を1つの通過点として産業界が次なるビジネスワードを創りだした。ご存知の通り、「IoT(Internet of Things:モノのインターネット)」だ。これは文字通り、モノ(Things)が常時インターネットにつながることを指す。機械や設備にかぎらず、物的なものすべてにセンサー等を接続させ、大量のデータを集める。そして、そのデータを分析し、サービスの改善や新商品開発、あるいは生産性の向上に役立てるものだ。
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