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「若い人は内地に逃げていきました」

島に若住職がやってきた(下)

2014年12月3日(水)

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宇久島の夕暮れ

 日が暮れて、辺りが漆黒の闇に包まれると、降ってきそうなほどの無数の星が、頭上に広がった。長崎県・宇久島の平地区のある民家から、和太鼓の心地よい音が響いてきた。

 「宇久島には伝統的に伝わる、祝いの歌があるんですが、その練習会に私は参加しているんですよ。この島は、かつてクジラ漁が盛んでした。歌は、クジラ漁に由来します。最近では調査捕鯨に替わり、クジラ漁を営む島民はほとんどいません。同時に、高齢化や祝い事が減り、歌は途絶える寸前になっています。このままでは完全に島の文化が消滅するという危機感を抱きながら、個人的には島に溶け込む意味で、島の人の輪の中に入れてもらっているんですよ」

 島の妙蓮寺の新しい住職として、2013年10月にやってきた若住職・佐々木浄榮さん(35歳)が誘ってくれたのは、島の伝統芸能の保存会「大唄(おおうた)ヨイヤサの会」だ。

 会場は、島で民泊を営んでいる島民宅。囲炉裏の部屋があり、立派な神棚が据えてある。その下には、豪壮な仏壇が鎮座している。別に火の神を祀った神棚もあり、この島の信仰深さを物語っている。

 男たちが「ヨイヤサ」を歌い出した。

 思たこちゃ 叶た末は鶴亀
 上に舞うのは鶴ではないか お宿繁盛と
 良かろ良かろよこれより先は ましてこの先ゃ

歌会の風景(左から3人目が佐々木さん)

かつてはクジラ漁やアワビ漁で栄えた

 宇久島では古くからクジラ漁やアワビ漁が盛んだった。唄の会に参加している佐世保市役所宇久行政センター産業建設課の福井樹夫さんが、宇久島の歴史について教えてくれた。

 「クジラ漁は富の象徴でした。2~3年、南氷洋に出れば家1軒が建ったですよ。(クジラを射止める)砲手の報酬はさらに手厚く、1年、海に出るだけで家が建った。生涯で1000頭以上、仕留めた人がいます。同時に、アワビも宇久島は日本一の漁獲高を誇っていました。ですが、商業捕鯨が終わり、調査捕鯨に替わって、今ではクジラ漁に出るのは1人だけになりました。アワビも最盛期は干しアワビにして中国に輸出していました。しかし、それも平成の初めくらいまで。今ではアワビの漁獲高は当時の250分の1の水準にまで落ち込んでいます」

コメント6件コメント/レビュー

基本的に地方経済で回る産業が無いとこうなる例。すべての地方が救えるわけはないのだが、しかし故郷が刻一刻とやせ細る姿は耐え難き辛さですね。都会者が口を挟んだとこで、何もできませんが。(2014/12/06)

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「「若い人は内地に逃げていきました」」の著者

鵜飼 秀徳

鵜飼 秀徳(うかい・ひでのり)

日経おとなのOFF副編集長、浄土宗僧侶

京都市景観市民会議委員(2016年)、佛教文化学会会員。 1974年生まれ。成城大学文芸学部卒業後、報知新聞社へ入社。2005年日経BP社に入社。日経ビジネス記者などを歴任。2016年4月より日経おとなのOFF副編集長。浄土宗僧侶の顔も持つ。正覚寺副住職。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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記事のレビュー・コメント

いただいたコメント

基本的に地方経済で回る産業が無いとこうなる例。すべての地方が救えるわけはないのだが、しかし故郷が刻一刻とやせ細る姿は耐え難き辛さですね。都会者が口を挟んだとこで、何もできませんが。(2014/12/06)

この事例は地域崩壊の側面もあるのかと感じます。離島に限らずそれぞれの地域での状況により将来立ち向かうことになるであろう諸問題の一端を垣間みせて頂けた内容でした。(2014/12/06)

「宗教崩壊」ではなく、「僻地の寺院組織の崩壊」でしょう。冥加金の高いこと。(2014/12/03)

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