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放棄地に行ってみた

「けものの世界」へ防衛ラインを

2014年11月28日(金)

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 耕作放棄地をごらんになったことがあるだろうか。メディアがよく「○×県と同じ面積」という表現を使うように、日本中でどんどん荒れ地が広がっている。農業を取材するなかで、これまで何度も放棄地を見てきたが、どれも「雑草が生い茂っている」というレベルだった。だが、今回見てきた放棄地は、とうてい再生が可能には思えなかった。

 最近、茨城県のある農協を取材していたときのことだ。職員が「道路を木がふさいでいる」と説明するのを、あまりイメージがわかないといった表情で聞いていると、「じゃあ、これから見に行こう」と言われた。

坂の上の放棄地

 職員の運転するミニバンで、農協の事務所を出発した。しばらくは「荒れ地」という言葉にはほど遠い、よく整備された田んぼが広がっていた。ところが、森に囲まれた狭い坂道を上り始めると、風景が一変した。いわゆる中山間地だ。

 「これが放棄地です」。ミニバンを降り、職員が指す先をみると、ある一画だけ、雑草が伸び放題になっていた。「こっちも放棄地です」。道をはさんだ反対側にも同じような雑草。ただ、周囲にはまだ田んぼや畑があり、放棄地と言ってもまだ開墾が可能にみえた。

 じつを言うと、これは「放棄地です」のひとことにこちらが反応し、車を止めてもらったからで、職員が本当に見せたかったのはここではなかった。話が本題に入る前、前ふりの段階で質問を始めてしまう、取材の悪い癖だ。

 もっと上に行くと、あたりは放棄地だらけになった。「あそこの畑はきれいだったんだよね」「田んぼだったんだ、ここも」。ハンドルを手に、職員がさびしそうに話す。みんなで元気に農業をやっていたころを思い出したのだろう。

 小さい棚田のあともあった。もうコメはつくっていないが、荒らすにまかせるのはしのびないのか、雑草は刈り取ってあった。「先祖代々の土地だからね」。アオダイショウがとぐろをまいていた。

 棚田こそ、先人たちが食料難をふせぐため、作付けが困難な場所に農地を切り開いた労苦の象徴だ。そんな感慨にふけっていると、小さな子どもが厳しい表情で棒をもってやってきた。見知らぬひとから土地を守るつもりだろうか。うしろには若い母親もいた。だが、職員によると「ただ住んでるだけ。農業はやってない」。

もとは棚田だった放棄地。草は刈ってある(茨城県西北の中山間地)

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「放棄地に行ってみた」の著者

吉田 忠則

吉田 忠則(よしだ・ただのり)

日本経済新聞社編集委員

1989年京大卒、同年日本経済新聞社入社。流通、農政、行政改革、保険会社、中国経済などの取材を経て2007年より現職。2003年に「生保予定利率下げ問題」の一連の報道で新聞協会賞受賞。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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