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「もうダメだ」と思った瞬間が、実はゴールに一番近づいている

第3回:大胡田誠弁護士が語る困難の乗り越え方

2014年12月1日(月)

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 全盲でありながら弁護士として活躍する大胡田誠氏。大学受験から司法試験突破までの苦労は並大抵でなかった。司法試験には5回目の挑戦で合格したものの、4回目に落ちた時には諦めるべきか悩んだという。それでもがんばり続けられたのはなぜか。

 自身の半生を綴った著書『全盲の僕が弁護士になった理由』(日経BP社)が、同名の2時間ドラマになります(12月1日、月曜日、21時からTBS系列で全国放送)。そこで、今回は、大胡田さんに困難への向き合い方について聞きました。

第1回では、大胡田さんが弁護士になることを決意されたいきさつを伺いました。しかし、実際に弁護士を目指すとなると困難の連続だったのではないですか。

大胡田:まったくその通りです。痛感したのは、競争のスタートラインに立つことすら難しいということです。まず直面したのは大学受験の壁でした。当時は、視覚障がい者が大学受験をしようとしても、教科書や大学受験の参考書が点字になっていなかったのです。私は受験勉強をする以前に、まずは教科書や参考書を点訳(活字を点字に翻訳すること)してもらえるボランティアを探して、教科書を作るところから始めなければなりませんでした。

 何とか教材が整って受験勉強を始めたものの、大学の受け入れ態勢も整っていませんでした。「視覚障がいがあるけれども受験をしたい」と言うと、多くの大学から断られてしまいました。点字での受験や入学後の対応などが難しいとか、「そうしたことは前例がない」というのがその理由でした。受験できる大学は限られていましたが、1年浪人して必死で勉強して、慶應義塾大学法学部の補欠にひっかかりました。何とか補欠で忍び込んだから、これで司法試験に向かってアクセル全開で勉強できるぞと思っていたのも束の間、そこでもいろいろなカベがありました。

どんなところでしょうか。

大胡田 誠(おおごだ・まこと) 弁護士
1977年静岡県生まれ。先天性緑内障により12歳で失明する。筑波大学付属盲学校の中学部・高等部を卒業後、慶應義塾大学法学部を経て、慶應義塾大学大学院法務研究科(法科大学院)へと進む。8年に及ぶ苦学の末に、2006年、5回目のチャレンジで司法試験に合格。全盲で司法試験に合格した日本で3人目の弁護士になった。07年に渋谷シビック法律事務所に入所。13年からは、つくし総合法律事務所に所属し、一般民事事件や企業法務、家事事件(相続、離婚など)や刑事事件などに従事するほか、障がい者の人権問題についても精力的に活動している。(写真:藤本和史)

大胡田:まず1つめは下宿探し、これが大変だったんです。実家が静岡県にありましたので、大学の近くで下宿を探す必要がありました。いくつかの不動産屋さんで「視覚障がいがあるのだけれども、今度大学に入るのでアパートを貸してくれませんか」と尋ねて回りました。ところが多くの大家さんで「安全の確保が難しいですね」とか、露骨なところだと「視覚障がい者の方には貸せる部屋がありません。他を当たってください」と追い返されてしまうことが何度もありました。

 私の母親は子どもの障がいに対して悲観したり、それを苦に病んだりということがない女性でした。その母親と一緒に不動産屋さんを回っていたのですけれども、このときばかりは帰り道に思わず涙ぐんで「誠、ごめんね」とぽつりと言ったんです。

 私はその涙で、母親がそれまで私をどんな思いで育ててくれたのかということを思い、「母親が自分の子どもが障害を持ったことで、『ごめんね』なんて謝らなければいけない社会なんておかしいぞ」「僕が弁護士になって絶対に社会を変えてやる」という気持ちを新たにしたのを覚えています。結局、大学まで電車を使って小一時間かかる場所に、理解のある大家さんを見つけて、そこから通学しました。

人の痛みが分かることが自分自身の強みに

そういう痛みを身をもって経験されてきたわけですね。

大胡田:視覚障がいを持って生活していますと、いろいろな無理解にぶつかります。それが人の心にどんなに峻烈な痛みを与えるのかということを感じます。一方で、そういったときに誰かが手を差し伸べてくれたら、その手がどんなに温かくて、どんなに勇気がわいてくるかということを日々自分も感じています。これが、実は私自身の弁護士活動での大きなメリットだろうと思っています。

 全く苦労なく司法試験に合格して、優秀な成績で弁護士をやっている仲間もいます。ところがそういった仲間の中には、申し訳ないけれども、人の痛みを自分のものとして理解する能力を見ると何か欠けている人もいます。そういったところを私は自分自身の中に持っている。それが弁護士を務める上での大きなメリットになっています。

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