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大きく進化したトヨタの燃料電池車

「水素社会」は目指すべき未来か

2014年12月2日(火)

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トヨタ自動車が12月15日に発売することを発表した燃料電池車(FCV)「MIRAI」(左)とホンダが公開したFCVのコンセプト車「Honda FCV CONCEPT」(右)(左は筆者撮影、右の写真はホンダ提供)

 11月の第4週(第1週は土曜日しかなかったが)は、ちょっとした「燃料電池車ウイーク」だった。17日の月曜日にホンダが新型燃料電池車(FCV)のコンセプト車を公開、翌18日にはトヨタ自動車が初めての一般消費者向けFCV「MIRAI」を12月15日に発売すると発表したからだ。筆者は、このコラムの第5回で触れたように、FCVの将来性について懐疑的である。懐疑的というよりも、当面の普及はかなり限定的だと考えている、といったほうがいいかもしれない。

 当面の普及がかなり限定的だという認識は、じつはFCVを発売したトヨタ自身とも一致している。初めての一般消費者向け販売といっても、MIRAIの2015年末までの販売目標台数はわずか400台である。記者発表の席で、今後の販売の見通しを聞かれた開発責任者の田中義和氏は、2020年代に数万台、という従来の見通しを変えなかった。トヨタの2013年の世界販売台数が約1000万台であり、2020年代にはさらに増えるであろうことを考えれば、数万台という販売台数は1%にも満たない数字であり、トヨタ自身、10年後でも本格普及期を迎えるとは考えていないことが分かる。

普及にはHEVより時間

 トヨタが引き合いに出すのはハイブリッド車(HEV)での経験だ。同社が世界で初めての量産HEVである初代「プリウス」を1997年末に発売して、ことしで17年になる。この間にHEVはトヨタの世界販売台数の1割を超えるまでになった。しかし、従来のエンジン技術をベースとして、ガソリン車と同じ燃料を使うHEVに対して、まったく新しいパワートレーンを搭載し、水素という新しい燃料の補給インフラの整備を必要とするFCVは、HEVよりもはるかに普及のハードルは高い。普及に要する期間も、より長いだろう。このことはトヨタ自身認めている。

 ただ、FCVの普及に懐疑的な筆者でも、1年間で400台という目標販売台数はさすがに少ないだろう、と思う。「初めての経験であるため、1台1台を大事に作りたい」(トヨタ)というのはその通りだろう。しかし、MIRAIの価格は8%の消費税抜きで670万円という採算を度外視した水準に設定されており、国の補助金が約200万円付く見通しで、さらに地方自治体も補助金の創設を検討している。例えば愛知県は車両を購入する中小企業向けに75万円程度の補助金を出すと伝えられているし、東京都も100万円程度の補助金を検討しているようだ。もしこれらが実現すれば、400万円強でFCVが買えてしまう。最新技術の塊をこの値段で所有できるというのは、破格のバーゲンと言っていい。

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「大きく進化したトヨタの燃料電池車」の著者

鶴原 吉郎

鶴原 吉郎(つるはら・よしろう)

オートインサイト代表

1985年日経マグロウヒル社(現日経BP社)入社、2004年に自動車技術の専門情報誌の創刊を担当。編集長として約10年にわたって、同誌の編集に従事。2014年4月に独立、オートインサイトを設立。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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