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衰退する旅館、成長するRYOKAN

まちと宿の共生が世界から人を呼び寄せる

2014年12月19日(金)

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国家戦略特別区域内で今月開業した、五軒長屋をリノベートした東京一小さなホテル。特区法13条を睨み、地域共生型のゲストハウスがサービスアパートメントの実験事業に挑む(写真:筆者撮影)

 2020年に訪日客数2000万人という目標達成に向けて、需要が集中する都市の宿泊施設の供給能力への懸念が高まっています。数(容量)の上では足りているという意見もありますが、質やコストなどの面でニーズを満たす施設となるとどうでしょうか。

 例えば、訪日外国人の約4人に1人が「日本旅館に泊まりたい」と希望しています。しかし、宿泊施設のタイプ別の客室稼働率を見ると、旅館は全国的に見て極めて低い水準にあり、全国トップの箱根を有する神奈川県でも50.1%、全国平均は32.4%に過ぎません(下の表を参照)。訪日客の確実なニーズがある一方で、そのニーズを取り込めていない旅館の姿が浮き彫りになっています。さらに、ピークとオフピークでも事情は異なります。宿の場合、今日はいっぱいだけど、明日なら空いていますという代替えも効きません。

都道府県の宿泊施設のタイプ別客室稼働率 2014年4-6月期
出典:観光庁「宿泊旅行統計調査」

 こうした中、2013年12月に国家戦略特別区域法(特区法)が施行されました。国家戦略特別区域では、一定の条件の下で外国人滞在施設経営事業が旅館業法(第3条第1項、旅館業を経営しようとする者は都道府県知事等の許可を受けなければならないという規定)の適用除外となり、マンションやアパートなどの空き部屋を外国人観光客向けの宿泊施設として利用することが可能となりました。提供できる日数については旅館・ホテルとの役割分担を考慮、地域の状況を勘案して自治体が条例で期間を定めるとしました。

 これに対し、全国旅館ホテル生活衛生同業組合連合会(全旅連)などは一斉に反発。東京都ホテル旅館生活衛生同業組合は都議会に反対の要望書を提出。全国初の条例制定を目指した大阪市では議会がこれを否決しました。

「空き家を外国人向けの宿に転用」も逆風強く

 反対の理由の一つは、旅館業法では公衆衛生や善良の風俗の保持、テロ対策などの観点から、宿泊者と面会し鍵の受け渡しを行うフロントの設置、宿泊名簿の記載と備え付け、国内に住所を置いていない外国人のパスポートの複写の保存などが義務付けられており、監督官庁による立ち入り検査の権限や罰則もあります。またこれ以外にも建築基準法や消防法、食品衛生法など多くの関連法の規制を受けますが、新たな法律にこれらの規定はありません。

 宿泊業は大型の設備投資やメンテナンスを要する装置産業です。そのため社会や消費者のニーズの変化に対応できないまま、苦しい経営を強いられている事業者も多いのです。新たな宿泊施設に客が流れることも脅威ですが、既存の施設には厳しい規制があり、空き家はその範疇外ではさすがにたまりません。

 一方、いち早く不動産会社と提携し、空き家オーナーと宿泊客を結ぶマッチングサービスの提供を開始しようした事業者などは出鼻をくじかれました。国家戦略特区自体が社会実験、スキーム確立の場とはいえ、法律が先走りし、運用でブレーキがかかる。制度は出だしでつまずいたかたちです。

 しかし、これに関連するもう一つの構造的な問題があります。全国的に広がる空き家の増加です。これはより深刻な問題です。

 総務省の「住宅・土地統計調査」によれば2013年10月現在、全国にある空き家の数は820万戸で総住宅戸数の13.5%を占め、過去最高となりました。既に管理者がいない空き家も増えており、これが放置されれば、地域の防犯機能の低下や景観の悪化、倒壊の危険なども招きます。まちの魅力や安全性の低下はそこに位置する宿泊施設にとっても死活問題です。

 これは、規制緩和に賛成・反対という単純な二項対立で生産性のない議論をして時間をロスすべき問題ではありません。まちと宿は共存共栄、まちが衰退すれば宿も打撃を受けます。逆にまちに活気があれば、宿の魅力も増します。

 今回は地域と共生する2つの宿の取り組みからこの問題にスポットを当て、未来の宿のかたちを考えます。

 最初に取り上げるのは1982年に日本旅館としていち早く外国人の受け入れを開始し、今や宿泊客の約9割が外国人という「澤の屋旅館」です。江戸の長屋の暮らしが残る谷根千(谷中・根津・千駄木)に外国人が来るきっかけを作った宿、館主の澤功さんがこだわるのは「家族経営」と「まちぐるみ」です。

 二番目に取り上げるのは、品川を中心に地域融合型のゲストハウスを展開する「宿場JAPAN」の若き経営者、渡邊崇志さん。今月、国家戦略特別区域内でのサービスアパートメントの実験事業をスタート。歴史的価値が認知されていない空き家や古民家をリノベーションして、現代の宿場町の創生を目指すという、そのビジネスモデルを追いました。

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「衰退する旅館、成長するRYOKAN」の著者

水津 陽子

水津 陽子(すいづ・ようこ)

合同会社フォーティR&C代表

経営コンサルタント。合同会社フォーティR&C代表。地域資源を活かした観光や地域ブランドづくり、地域活性化・まちづくりに関する講演、コンサルティング、調査研究、執筆等を行っている。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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