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生保業界にある経営のブルーオーシャン

保険契約に内在するリスク・資本管理の分野に経営資源を

2015年1月29日(木)

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 日本の生命保険業界全体が投資家にもたらすリターンは、一貫して資本コストを下回っている。高い企業価値の創造に成功した保険会社がある一方で、その他の保険会社は資本コストを上回るリターンを生むことができず、業界全体の価値創造の足を引っ張っている。勝ち組企業との違いはどこにあるのだろうか?

 1980年代、日本の生命保険会社は、年率20%を上回る資産の増加という好況に恵まれた。日本の世帯の保険加入率は90%台まで上昇し、1人当たりの保険金額も米国を50%以上、上回っていた。さらに保険料は税務上所得控除され、予定利率も高かったことから、多くの日本人が貯蓄のために生命保険を利用した。日本人女性の就労率が低かったことも保険加入に拍車をかけた。

 また、その時期、日本の生命保険会社は国際金融市場に大規模に進出しており、あらゆる資産価値が上昇していたバブル期の恩恵も受けていた。

 しかし90年代に入り、保険契約者に支払う予定利率より、契約者から得た保険料などを運用する投資利益率の方が高いことに頼っていた保険業界にツケが回ってきた。投資利益率が予定利率を下回り、日本の生保業界が投資家にもたらすリターンが資本コストを下回り始めたのである。

 その後も生保業界は、企業価値を毀損し続けている(図1)。その結果、大手生命保険会社7社が破綻し、業界再編は加速した。96年から2005年の間に、日本の生命保険会社は44社から38社に減少した。

図1)1998年以降、日本の生命保険業界のリターンは資本コストを下回っている
*1:ROE(株主資本利益率)は当期利益を株主資本で除して算出。相互会社の契約者配当は当期利益から控除して計算。資本コストはCAPMにより算出
(資料:生命保険協会、ブルームバーグ)

 業界の利益率は短期間ではあるが2000年代中盤に、若干の好景気などによりやや持ち直したが、2008年の景気後退により、このわずかな利益は帳消しとなった。

 生保業界の業績が景気による追い風に大きく依存しているのは、日本に限ったことではない。生保業界が抱えるリスクの種類が拡大するにつれ、保険会社の業績と市場サイクルとの連動も強まった。米国や日本など成熟した市場ほど、このことが大きな問題となっている。

 さらに、年金基金など他の機関投資家との競争激化により、保険会社は収益性の高い投資案件から押し出されたことから、価値創造の源泉として保険契約に内在するリスク管理能力の強化を迫られることとなった。

保険会社間の大きなパフォーマンスの差

 生保業界全体としては資本コストを上回るリターンを生み出せていないが、個別の会社を見ると、常に市場を上回るリターンをあげている会社が存在し、大手20社の中においても企業価値創造の面で大きな差が存在する(*注)。2002年から2013年にかけて、上位5分の1の保険会社の株主剰余が年率9~18%増加している一方で、下位5分の1の株主剰余は-3~2%の変動であった。最上位と最下位の株主剰余の伸びにはおよそ21ポイントの差が生じている(図2)。

*注:価値創造を同一条件で計測する指標: 日本の生保業界における企業価値創造を計測する最も適切なパフォーマンス指標は、株主への配当を調整後に剰余金を増やす能力を表す調整後簿価純資産(これを本稿では株主剰余と呼ぶ)の伸びである。これは利益率と成長の双方を計測するため、株式会社か相互会社かの如何によらず、どの保険会社にとっても適切な指標である。株式会社にとっては株価純資産倍率は一般的な指標であり、相互会社も剰余金を伸ばそうと努めるものであるからだ。この指標は、ROE、株主へのトータルリターン、経済価値の創出を含めた他の指標とも長期にわたって深い相関を示す。
図2)トップパフォーマーとボトムパフォーマーの間には、21%の差が存在
(資料:生命保険協会、マッキンゼー分析)

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「生保業界にある経営のブルーオーシャン」の著者

V・アグラワル

V・アグラワル(びべっく・あぐらわる)

マッキンゼー パートナー

金融サービスグループのリーダー。生命保険、退職金および資産運用に関する豊富な専門知見を基に、米国やアジアの様々な金融機関に戦略、オペレーション、組織構造上の課題に的を絞ったコンサルティングを行う。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

内山 憲

内山 憲(うちやま・けん)

マッキンゼー AP

金融サービスグループのコアメンバー。金融機関を中心に、全社戦略、営業改革、オペレーション改善等のコンサルティングに従事。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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