訪日観光で出遅れた箱根、切り札は芸者

寛永年間創業、老舗旅館の挑戦

2015年1月から一の湯でスタートした、箱根芸者の伝統の唄や踊り、お座敷遊びを体験できる「芸者芸能体験プラン」。通常の宿泊費用にプラス3000円(税別)で参加できる。参加者の約半数が外国人客

 箱根温泉は「じゃらん人気温泉地ランキング」で調査開始以来、9年連続で「もう一度行ってみたい温泉地」1位に選ばれるなど、日本屈指の集客力を持つ温泉地です。2013年の箱根町の観光入込客数は2085.7万人、うち宿泊客数は417.9万人(22.6%)。その強みはなんといっても交通の便がよいことで、「街の雰囲気が好き」や「自然に囲まれている」、「手頃な料金で行ける」などの要素でも高い評価を得ています。

 箱根町の宿泊施設数は2004年には575軒(収容人員3万6572人)ありましたが、2013年には438施設(収容人員2万9472人)に減少しました。ただ減少の多くは寮や保養所で、実は旅館・ホテルはこの間に15軒増加しました。多くの温泉地では淘汰は新陳代謝でなく衰退へ繋がりましたが、箱根は淘汰と同時に新規参入が起き、高付加価値型の高級宿と異業種参入等による低価格宿という2極で増加が続いています。

訪日客を取り込めていない箱根

 一方、訪日観光では、箱根町の外国人宿泊客数は16万8239人、宿泊客全体の4%を占めるに過ぎません。

 観光庁の「宿泊旅行統計調査(2014年7~9月期)」で、東京都の外国人延べ宿泊者数340万2000人泊に対し、神奈川県は32万8000人泊で、10分の1以下にとどまっています。また、同調査で旅館の客室稼働率では神奈川県は51.7%で、北海道59.7%、沖縄県52.7%に次ぐ全国3位となりました。同期の外国人延べ宿泊者数は北海道が118万人、沖縄県は69.7万人となり、客室稼働率を大きく押し上げる要因となりました。箱根は東京に隣接する好立地ながら、その恩恵を訪日観光では十分に取り込めていません。

 その箱根温泉で年間約2万人の外国人宿泊を得ているのが一の湯グループです。創業寛永7年(1630年)の老舗旅館「塔ノ沢一の湯本館」ほか、箱根エリアで8つの宿泊施設を有し、従業員数118名、売上高13億5800万円(2014年12月期)。客室稼働率80%を誇る温泉旅館・リゾートホテルグループです。

 バブル崩壊後の1994年、当時1泊1万5000~2万円だった宿泊料金を9800円に下げるという、箱根の老舗旅館としては異例の低価格路線に転じて注目を集めた宿は、早くからチェーン化のビジョンを掲げ、人時生産性の向上などの改革と多店舗化を進めてきました。

 今年1月、この一の湯で、主に訪日客をターゲットとした新たな集客プロジェクト「芸者芸能体験付宿泊プラン」が投入されました。訪日観光における「芸能」はいまだ黎明期にあり、観光商品として確立されたものはごく一部です。しかし古典芸能であれ、民族・郷土芸能であれ、古来より国や地域で守られ伝承されてきた日本文化に直に触れるもの。活用は地域共通の課題です。

 今回は、訪日観光における芸能の活用の可能性と課題を探るとともに、一の湯が推進する箱根における温泉旅館・リゾートホテルのドミナント戦略を追いました。

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著者プロフィール

水津 陽子

水津 陽子

合同会社フォーティR&C代表

経営コンサルタント。合同会社フォーティR&C代表。地域資源を活かした観光や地域ブランドづくり、地域活性化・まちづくりに関する講演、コンサルティング、調査研究、執筆等を行っている。

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いただいたコメントコメント3件

常連の日本人客が最初からいないなら良いが東アジアの特に団体ツアー客ばかりになると初来日でマナーを知らなかいところに人数も多いから日本人固定客は間違いなく逃げる。(2015/02/26)

例えば秘湯や湯治場に外国人旅客が大挙して押し掛けてきたらどうだろうか。訪日観光客を増やすことが良いこととは限らない。(2015/02/26)

箱根は出遅れてはいないし、芸者で挽回というセンスがピント外れ。(2015/02/26)

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