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「子供がいることを幸せと思えない」

ある一つの貧困を見つめて

2015年3月23日(月)

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 日経ビジネスの3月23日号で、日本の「貧困」をテーマにした特集を掲載した。日本の「相対的貧困率」は16.1%に上昇し、年122万円未満で生活する人は2000万人を超える状況になった。これだけ膨れ上がった貧困の実態を見つめることは、この国の停滞を考える上で必要不可欠だ。

 日経ビジネスオンラインでは、特集の連動企画として、誌面に収めることができなかった内容について連載する。第1回は、ある女性の話をしたい。特集の執筆を終えた今でも、頭にこびりついて離れない一言を発した女性だ。

 「誰かと誰かが結婚しました。1年後か2年後か、子供ができて生まれました。そしたら夫婦が愛情を持って慈しみ養育していくわけですよね。それが、私には不思議に思えるんです。違和感がある」

 「そうすることはすごいことだと思うけど、自分がそういう道をたどっていけるかと言えば、多分無理だと思う。その状態を自分が幸せだと思えるかと言われると、ピンとこない」

 この言葉を聞いて、読者の方はどんな人物像を思い浮かべるだろうか。これから、彼女が私に語った来歴を記していく。考えていただきたいのは、彼女が「特殊な人」なのかどうかということだ。

裕福だった幼少時代

 尾島遥さん(仮名、36歳)は中国地方のある都市に生まれ育った。実家は代々続く米屋で、支店もあり羽振りは良かった。家にはお手伝いさんがいて、遥さんは「お嬢さん」、弟は「坊ちゃん」と呼ばれていた。

 父方の祖父母と同居しており、両親と姉弟の6人家族。ただ、母は実家と離れた場所にある支店の切り盛りをしていたため、物心がついたころから日中、顔を合わせることは日曜日くらいしかなかった。夕方から夜に働いていた父とも、生活時間帯が全くズレており、「一緒にご飯を食べた記憶がない」という。

 身の回りの世話は祖母がしてくれていた。だが小学4年生か5年生の時、その祖母が皮膚ガンになり、世話をしてもらえなくなった。そのためか、支店は閉じられ、母は実家に戻ってきた。

 遥さんは母との距離が近づき「うれしかった」と言う。禁止されてはいたが、時々、学校が終わった後、勝手に母のいる支店を訪ねたりしていた。実家の商売の事情とはいえ、幼心に母親の不在を寂しく感じていた。

 だが、母が実家に帰ってくると、それまで何となく思っていたことが、現実のものとして突き付けられた。小学生の目にも明らかに、父と母には全く交流がなかった。父が家を不在にしているのは余所にほかの女性がいるからだったし、母もそれを承知で放任していた。父は時々、借金も作っていた。

母に言われた「あんたがいなけりゃ」

 母に「離婚したい」「離婚したらあんたらはどうする」と、何度か聞かれた。遥さんは「お父さんあんなだし、弟とお母さんの3人でいいよ」と答えていた。

 遥さんの両親は見合い結婚だった。母親から聞いた話では、一度母が断ろうとした縁談を、父がいろいろと手を回して半ば強引に結婚に持ち込んだという。母は結婚した後も、実家の母親(遥さんの母方の祖母)に「離婚したい」と漏らしていた。だがそのたびに「3年は我慢しろ」と諭された。

 だがその3年が過ぎる前に、母は遥さんを身ごもる。母は以前から「女の子が欲しい」と周囲に話していたらしく、遥さんが生まれた時は大喜びだったようだ。

 だが時が過ぎ、夫との離婚協議で感情の高ぶった母は、遥さんが今も忘れられない一言を漏らす。

 「あんたさえできひんかったら、私は逃げられたのに」

コメント68件コメント/レビュー

他のコメントにもある様に、貧困→教育を受けられない→仕事に就けない→犯罪でお金を稼ぐ図式や、貧困層の拡大→犯罪の増加→治安の悪化という図式も見えると同時に、昔の見合婚の負の部分を見せつけられたような気がします。 恋愛結婚も勢いだけでは続かないですし、結婚して子供がスクスク育つ家庭を築くのは難しいものだなと改めて思いました。 また、何処の国のどんな家庭に生まれるかは運でしか無い訳で、その点で自分はとても幸運な部類なんだろうなと。 でも、それを次の世代に幸運に繋げられないでいる自分の不甲斐なさも感じました。(2015/09/01 11:46)

「2000万人の貧困」のバックナンバー

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「「子供がいることを幸せと思えない」」の著者

中川 雅之

中川 雅之(なかがわ・まさゆき)

日本経済新聞記者

2006年日本経済新聞社に入社。「消費産業部」で流通・サービス業の取材に携わる。12年から日経BPの日経ビジネス編集部に出向。15年4月から日本経済新聞企業報道部。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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記事のレビュー・コメント

いただいたコメント

他のコメントにもある様に、貧困→教育を受けられない→仕事に就けない→犯罪でお金を稼ぐ図式や、貧困層の拡大→犯罪の増加→治安の悪化という図式も見えると同時に、昔の見合婚の負の部分を見せつけられたような気がします。 恋愛結婚も勢いだけでは続かないですし、結婚して子供がスクスク育つ家庭を築くのは難しいものだなと改めて思いました。 また、何処の国のどんな家庭に生まれるかは運でしか無い訳で、その点で自分はとても幸運な部類なんだろうなと。 でも、それを次の世代に幸運に繋げられないでいる自分の不甲斐なさも感じました。(2015/09/01 11:46)

不幸な家庭は拡大再生産される。破綻した家庭で育った子供は、自分が安定した家庭を築くことができない。したがって、離婚したほうが二人のためだというのは、簡単に言ってはいけない。嫌な結婚、崩壊した家庭でも、離婚という結末は、夫婦二人は楽になるかもしれないが、子供にとっては冷え切った家庭よりも、さらにひどい体験なのだ。ギリギリまで家庭を壊さないようにすべきだ。
水商売、風俗に入る女性は、かなりの確率で離婚した親を持っていたり、親からネグレクトを受けていたりする。子供の頃に求めても、得られなかった愛情を、夜の店で疑似体験しようということなのかもしれない。これは、心理学の対象となる問題である。(2015/09/01 00:02)

この人のような人は、実は沢山いると思う。
こういう人が沢山いるから、少子化は解決しない。
こういう人を救う方法は、わからない。(2015/08/31 16:55)

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三品 和広 神戸大学教授