
4月22日の昼下がり。ドイツ南部にあるシュツットガルト中央駅のプラットホームは、がらんとしていた。ボッシュやダイムラーの本拠地がある大都市なのに、電車の往来はまばらだ。出張者なのか旅行者なのか、スーツケースを引きずった外国人が行き先の映っていない電光掲示板を眺めていた。
無理もない。この日、ドイツ鉄道の運転士らが構成する労働組合GDL(Gewerkschaft Deutscher Lokomotivfuhrer)がストライキを決行したのだ。賃金の5%引き上げや労働時間の短縮といった待遇改善を経営側に要求するためで、旅客車両で22日午前2時(現地時間)に始まったストライキは翌23日の午後9時まで、43時間にわたって続いた。
タイミング良く(悪く?)出張中だった筆者は、ドイツの人たちよりも一足遅れ、21日の昼になって初めてストライキが決行されそうだという情報を得た。それまでも取材のために毎日のようにドイツ鉄道を利用していたというのに、様々なところで発信されていたストライキに関する情報には気づいていなかった。

なぜかというと、筆者がいつも利用していた英語版の乗り換え案内サイトには、一言もストライキの情報がなかったからである。ところが、試しにドイツ語版に切り替えてみると、トップに大きく「!」のイラストとストライキの情報が表示されている。よくよく見てみれば、駅の案内版にもドイツ語でストライキの案内が出ているではないか。
記者のくせに注意力が足りないと言われれば、それまでだ。だがこの事実に気がついた時、前の週に訪れた世界最大級の産業見本市「ハノーバー・メッセ」で聞いた、ある一言を思い出した。製造業の革新を目指す「インダストリー4.0」という言葉があふれかえっていたこの会場で、独研究機関、スマートファクトリーKLのデトレフ・チュールケ会長がこう言ったのだ。
「ドイツは過ちを犯した」
ドイツ人やフランス人が日本人より遥かに生産性が高く休暇が多いのは【ストライキを積極的に行っていること】が大きな要因だと思っています。フランス国鉄や、ドイツ国鉄のかつての日本の国労、動労を思わせる運転士のストライキ。日本から見たら、本当に羨ましいの一言です。日本も40年前に立ち返って、ストライキを頻発させれば良いのに、と嘆息します。経営者もドイツやフランス並みに緊張感が高まると思います。(2015/04/28)