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ヒトラーに地政学を個人教授したハウスホーファー

「日独防共協定」に関与

2015年5月13日(水)

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 地政学が一般にそれほど知られていない最大の理由は、なんといってもドイツ地政学にある。

 「ドイツ地政学」(ゲオポリティーク:geopolitik)は、地政学の知的伝統を20世紀後半に歴史の闇に葬り去る上で、大きな役割を果たした。

 ドイツ地政学そのものは、19世紀後半のドイツに生まれた。そして、20世紀初頭にナチス・ドイツに活用され、その拡大主義や人種差別主義を支える理論的支柱の役割を果たした。それゆえ悪名高くなったドイツ地政学は最終的には第二次大戦の終了と共に終わった。

 ここではその複雑さを踏まえながらも、歴史的に大きな役割を果たした2人の人物について、話を進めていきたい。

ドイツ地政学の祖:ラッツェル

 フリードリヒ・ラッツェル(1844~1904)は、「政治地理学」(political geography)の元祖として知られている学者。彼の主著のタイトルは、まさに『政治地理学』(1897)である。地政学と紛らわしい名称を持つ政治地理学は、地政学に比べてイデオロギー的な面が薄く、国内政治と地理環境との関係(地方自治や選挙の区割りなど)を研究する学問だ。

 ドイツ南西部のカールスルーエの裕福な家に生まれたラッツェルは、まずは薬剤師の助手としてキャリアをスタートさせた。後に自然科学一般に興味をいだくようになり、いくつか大学を渡り歩いたあと、ハイデルベルグ大学で動物学の博士号を取得している。

 彼独自の研究は、たまたま記した旅行記によって開花した。彼は新聞社の臨時コラムニストとして、欧州だけでなく、米国にまで渡って地理の状況を調査している。そして、ここで目の当たりにしたのが、西へ西へと領土を拡大しつつある米国であった。

 普仏戦争(1870~71)に参戦し、その勝利によって統一ドイツ帝国の誕生を目撃したラッツェルは、ミュンヘン工科大学に入り直し、講師として調査研究を続けた。この時に行った授業の講義録や、それ以前に書き溜めた米国旅行記をまとめたものを出版して、世間で注目を集めるようになった。学術的にはこの頃の旅行記などが、後の彼の主著となる『人類地理学』として結実した。

 より重要なのは、このミュンヘン時代に、のちに紹介するドイツ地政学の中心人物であるカール・ハウスホーファーに出会い、個人的に地理学の知見をレクチャーしていた事実だ。ラッツェルは、カールの父、マックス・ハウスホーファーと同工科大学で同僚だった。若きカールは、父とラッツェルと共に、イザール川のほとりを歩きながらラッツェルと議論をしている。必然的に、ハウスホーファーはラッツェルから思想面で多大な影響を受けた。そして、このハウスホーファーがヒトラーに地政学的なアイディアを教えたのだ。

 ラッツェルの考えの中で、ドイツ地政学全般に最も大きな影響を与えたのは、「レーベンスラウム」(Lebensraum:生存圏)という名称で知られる「地理的空間」(space)の概念である。ラッツェルによれば、あらゆる国家は生物のような「有機体」であり、その活力を維持するためには、より大きな空間、つまり「生存圏」を必要とする。

 この考えを悪用すれば、「ドイツは領土を拡大すべきだ」という政治的な宣伝にも使える。そして実際にそのような宣伝に使ったのが、スウェーデンのルドルフ・チェーレン(「地政学」という言葉を最初に使った学者/政治家)やハウスホーファーなのだ。

 とりわけここで注目しておきたいのは、ラッツェルが19世紀の米国の西方拡大からインスピレーションを受けており、これをドイツにも応用できると考えていたことだ。ようするにドイツ地政学にある「領土拡大」というテーゼは、実は19世紀米国の領土拡大に源流がある。古典地政学の源流が米国人のマハンにあることを合わせて考えると、ドイツと米国という二つの大きな要素が古典地政学に大きく影響したことに気付かされる。

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「ヒトラーに地政学を個人教授したハウスホーファー」の著者

奥山 真司

奥山 真司(おくやま・まさし)

地政学・戦略研究家

カナダ、ブリティッシュ・コロンビア大学卒業。英国レディング大学大学院博士課程修了。戦略学博士(Ph.D)。国際地政学研究所上席研究員、青山学院大学非常勤講師。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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