ドイツは、再生可能エネルギー(再エネ)について、固定価格買い取り制度を事実上維持しており、発電量の比率を2025年に40~45%、2035年に50~55%、2050年に80%にする目標を堅持している。
【ドイツの再エネ推進策を巡り議論が迷走】
ドイツのエネルギー制度、特に再エネ普及策に関しては、評価が分かれる。再エネは普及しているが、エネルギーコストは上がり、産業は競争力を失っている。その結果、再生可能エネルギ-法(EEG:Erneuerbare Energien Gesetz)が大幅に見直されたと言われている(資料1)。大規模火力発電の稼働率が下がり、その投資意欲は減退しているとの声も上がる。

確かに、ドイツの政策を巡り様々な議論があるが、かなり誇張がある。特に、最近の日本の報道を見ていると、「ドイツは2014年の再エネ制度改正によって、固定価格買い取り制度(FIT:Feed in Tariff)を廃止し、市場原理を導入した」という類の報道が多い。「エネルギー政策の失敗を認め、再エネ推進を断念した」といったものまである。失敗との認識が定着したかのような雰囲気すら漂う。
【再エネ普及目標は不変】
一方、ドイツの再エネ電力比率は、2014年に26%に達し、2030年に50%に高める目標は視野に入ったという。EU(欧州連合)は、今年末にパリで開かれる第21回国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP21)で、2030年の目標としてCO2の40%削減、再エネ率27%(発電比率では45%)を表明する見通しだ。
真実はどうなのか。今回は、最近のEEG改正に焦点を当てて検証する。結論は、FITは事実上続いているということ。「市場との調和」を徐々に組み込んでいるが、「事業収益を安定化させて投資を誘引する」という施策は本質的に変わっていない。筆者は、昨年7月7日の本コラムで、ドイツの再エネ制度改革を取り上げた。今回は、今年3月末から4月上旬にかけて2週間欧州を訪問して得た知見を盛り込んだ。
【2014年再エネ法改正の再検証】
ドイツの再エネ制度は、昨年8月に大幅に改正された、ということになっている。これは「2014EEG」と称されるが、「産業特権」等の不公正な扱いを是正する措置を含んでいる。改正の背景として、再エネ賦課金(EEG-Levy)が急増し、電気料金を押し上げていることがある。また、EU政府から、「エネルギー多消費型産業を再エネ賦課金の適用除外としていることが公平性に欠く」「外国企業の再エネ市場参入を促すべき」などの勧告を受けたことも影響している。以下、主要な改正点を見ていく(資料2)。
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