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米国と地政学:戦後のソ連との戦い方を戦前ドイツに学ぶ

基本は「上から目線」

2015年5月20日(水)

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 「古典地政学」の伝統は、戦後になってキッシンジャーの活躍とともに微妙な復活をとげた。これは、本連載の第1回目で述べたとおりだ。

 ところが、キッシンジャーが地政学を復活させるはるか以前に、こともあろうにドイツ地政学の中心人物であるカール・ハウスホーファーに直接インタビューし、その地政学的知識を半ば受け継ぐかたちで米国にもたらした人物がいた。

 エドマンド・ウォルシュ(Edmund A. Walsh)というイエズス会の神父である。この人物は単なる神父ではなく、第二次世界大戦が始まる以前から国際的な舞台で大活躍していた。バチカンから戦前のソ連に派遣されて外交交渉を行ったり、米ジョージタウン大学の外交学院を創設した実績を持つ。

 この外交学院には彼の名前が現在も冠されている。クリントン元大統領をはじめとする世界各国の主要人物がこの外交学院の卒業生であることは有名だ。加えて、戦略国際問題研究所(CSIS)という世界トップレベルのシンクタンクがここを母体としていることも特筆に価する。

 ウォルシュ神父は戦後すぐの1945年の秋に、ミュンヘン近郊のハウスホーファーの自宅まで赴いている。米国政府の要請を受けて連合軍側の尋問官の一人として訪問し、本人と色々と言葉を交わした。

 この時の会話の詳細を、ウォルシュ自身が1冊の本にまとめてこのあとすぐに出版した(Total Power: a Footnote to History, 1948)。加えて、この本は、米国の大戦略まで語っている。すなわち、米国にとって新しい敵となった共産主義国・ソ連に対してどのように対抗していけばよいのかを論じているのだ。

ソ連が抱くナチスと同じ欲望

 日本の一部にはウォルシュのことを「ハウスホーファーの弟子」と語る向きもあるようだが、実情はそれよりもやや複雑だ。このインタビュー本では、ナチス・ドイツが第二次大戦前から抱いていた国際的なパワーへの欲望を分析し、ソ連が同様の欲望を抱いていると結論付け、米国はソ連に備えなければならないとの姿勢をウォルシュは固めているからだ。

 言い換えれば、ウォルシュは米国に対して、「ナチス・ドイツの亡霊にとりつかれたような、共産主義のソ連指導部への警戒を怠るな」と警告しているのだ。そして、そのためにソ連が抱く地政学的なロジックを知る必要があると説いている。

 したがってウォルシュの実情は「ハウスホーファーの弟子」ではなく、ドイツ地政学やソ連の侵略的な思想を知るに及んで、それに対抗するために米国自身も地政学的な考え方を熟知する必要を感じ、ハウスホーファーの考えを批判的に受け継ぐ形になったと言えるだろう。

 米国が地政学的な思想を受け継がなければならなくなった理由がもう一つある。それは、米国が第二次大戦後に、グローバルな大戦略を考えることができるだけの圧倒的な国力を、世界の主要国の中で唯一手に入れたからだ。

コメント5件コメント/レビュー

シーパワーが勢力均衡のためにランドパワーの一方に近付くのなら、その国が大国にならない様にすることが肝心。さもないとランドパワーが入れ替わるだけの結果となります。元々反目し合っていたランドパワーの一方に肩入れなどするより、本来のシーパワーとしての味方である日本と上手くやる事を考えるべきだったんじゃないの?キッシンジャーなんてそんなもん。(2015/05/20)

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「米国と地政学:戦後のソ連との戦い方を戦前ドイツに学ぶ」の著者

奥山 真司

奥山 真司(おくやま・まさし)

地政学・戦略研究家

カナダ、ブリティッシュ・コロンビア大学卒業。英国レディング大学大学院博士課程修了。戦略学博士(Ph.D)。国際地政学研究所上席研究員、青山学院大学非常勤講師。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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シーパワーが勢力均衡のためにランドパワーの一方に近付くのなら、その国が大国にならない様にすることが肝心。さもないとランドパワーが入れ替わるだけの結果となります。元々反目し合っていたランドパワーの一方に肩入れなどするより、本来のシーパワーとしての味方である日本と上手くやる事を考えるべきだったんじゃないの?キッシンジャーなんてそんなもん。(2015/05/20)

「マハンは、シーパワーである英国と米国が手をたずさえて、ランドパワーであるロシアに対抗するビジョンを描いた」のに、シーパワーである日本と手を携えることは思いもよらなかったのは人種差別か黄禍論か。(2015/05/20)

戦前のアメリカはマニュフェスト・ディスティニーとしての西漸運動先としてしか東アジアを見ず、権益である中国に肩入れするために日本と敵対していた訳ですよね。共産主義に対する無防備さも指摘したいね。日本が一生懸命やっていた、ソビエトと云う瓶の蓋の役割を自分が負ったのは歴史のツケでしょう。(2015/05/20)

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