• BPnet
  • ビジネス
  • IT
  • テクノロジー
  • 医療
  • 建設・不動産
  • TRENDY
  • WOMAN
  • ショッピング
  • 転職
  • ナショジオ
  • 日経電子版

トヨタと正反対の判断をしたホンダのエンジン

わくわくゲートも魅力な新型「ステップワゴン」

2015年5月23日(土)

  • TalknoteTalknote
  • チャットワークチャットワーク
  • Facebook messengerFacebook messenger
  • PocketPocket
  • YammerYammer

※ 灰色文字になっているものは会員限定機能となります

無料会員登録

close

ホンダが4月24日に発売した新型「ステップワゴン」。ダウンサイジングターボエンジンの搭載や、縦にも横にも開くリアゲート「わくわくゲート」が特徴だ。

 こういうことがあるから、自動車技術の世界は面白い。同じような目的を追求しながら、その判断が全く逆の方向を向いているからだ。ホンダが4月24日に発売した新型「ステップワゴン」に搭載したエンジンのことである。またか、と思われるかもしれないが、前回に引き続いて今回のお題も「ダウンサイジングターボエンジン」である。同じネタで2回続けるのはこの連載でも初めてのことだが、それだけ面白い出来事に出くわしたのだと思っていただきたい。

 前回取り上げたトヨタ自動車「オーリス」に続いて、ホンダも新型ミニバン「ステップワゴン」に、排気量1.5Lのダウンサイジングターボエンジンを搭載した。ホンダのクルマで、ダウンサイジングターボエンジンを搭載するのは、ステップワゴンが初めてだ。ホンダのダウンサイジングターボの考え方も、欧州メーカーやトヨタと同じである。ベースエンジンよりも排気量を小さくし、燃費を向上させる。低下する出力は、ターボで補う。

 ターボエンジンは、自然吸気(NA)エンジンよりノッキング(異常燃焼)が起こりやすくなるので、これを避けるために圧縮比を下げる必要があるが、そうすると熱効率が下がる。そこで、トヨタと同様に、直噴システムにターボを組み合わせることで、圧縮比の低下を極力抑えているのが特徴である。トヨタのエンジンがプレミアムガソリン仕様で圧縮比が10.0だったのに対して、ホンダのエンジンは、レギュラーガソリン仕様であるにもかかわらず10.6と、トヨタよりも高い値を達成している。

ベースエンジンと吸排気を逆に

 ホンダのエンジンで面白いのは、ダウンサイジングターボという同じ狙いのエンジンでありながら、トヨタと全く逆の判断をしていることだ。“逆”とはどういうことか。トヨタがオーリスに搭載した排気量1.2Lのダウンサイジングターボエンジンは「8NR-FTS」というのだが、8NRという名称には、トヨタのNR系エンジンで8番目に開発されたという意味がある。NR系のエンジンには、「ヴィッツ」や「カローラ」に搭載されている排気量1.3Lの「1NR-FE」エンジンや、1.5Lの「2NR-FE」がある。この連載の第1回で紹介した新型エンジンは、この1NRエンジンをベースに改良した「1NR-FKE」である。同じ思想で2NRエンジンを改良した「2NR-FKE」も最近、部分改良されたカローラから搭載が始まった。

 これらのNR系エンジンは、エンジンの後方から空気を吸い込み、前方に吐き出す「後方吸気・前方排気」のエンジンであった。ところが今回トヨタは、NR系エンジンをベースにダウンサイジングターボエンジンを設計するに当たり、吸気・排気の向きを逆にした「前方吸気・後方排気」のエンジンに改めたのである。エンジンの吸排気の向きを逆にするということは、変速機を取り付ける位置も反対になり、スターターやオルタネーター(発電機)といった補機類を取り付ける位置も逆になる。早い話が、8NR-FTSエンジンはNR系とは言っても、全くの新エンジンに近い。ほとんど新設計に近いエンジンなのにNR系の名前が付いているのは「ボアピッチが共通だから」(開発担当者)にすぎない。

 ここでボアピッチというのは、隣り合うシリンダーの中心軸の距離のことだ。シリンダーの内面は回転する工具を使って加工する。生産性を上げるため、シリンダーの内面加工は、複数のシリンダーを同時に加工する機械を使うことが多い。こうした機械では、取り付ける回転工具の径を変えることで、シリンダーの内径の違いには対応できるが、回転工具を取り付ける軸の位置は固定なので、隣り合うシリンダー中心の距離、すなわちボアピッチは変えられない。逆にいえば、ボアピッチさえ共通であれば、排気量が多少違うエンジンでも、同じ設備で加工できる。今回の8NRエンジンの、他のNR系エンジンとの血縁関係は、ボアピッチのみといってもいいくらいだが、それでもボアピッチが重要なのは、加工設備を共有できるからなのだ。

ホンダは後方吸気・前方排気に

 なぜステップワゴンの記事のはずなのに、前回取り上げたトヨタのエンジンのことを長々と説明しているのか。実はトヨタとホンダで正反対の判断をしたのは、まさにこの吸排気の向きのことだからだ。ホンダが今回ステップワゴンに搭載した「L15B」エンジンのベースとなったのは、フィットなどに搭載されている1.5Lエンジンで、形式もまったく同じL15Bである。

 ところが、フィットなどに搭載されている自然吸気(NA)のL15Bエンジンと、今回ステップワゴンに搭載されたダウンサイジングターボのL15Bエンジンは、形式は同じでも、実は全く別物といってもいいほど違う。というのも、ベースとなったNAのL15Bエンジンは、前方吸気・後方排気のエンジンだったのに対して、ステップワゴンに積んだダウンサイジングターボ版では、後方吸気・前方排気に変更しているのだ。

新型ステップワゴンに搭載されたダウンサイジングターボエンジン「L15B」。これはエンジンを前方から見たところ。ターボや触媒がエンジンの前方に配置されているのが分かる。下に配置されている横長の装置は吸気を冷やす「インタークーラー」である。

コメント3

「クルマのうんテク」のバックナンバー

一覧

「トヨタと正反対の判断をしたホンダのエンジン」の著者

鶴原 吉郎

鶴原 吉郎(つるはら・よしろう)

オートインサイト代表

1985年日経マグロウヒル社(現日経BP社)入社、2004年に自動車技術の専門情報誌の創刊を担当。編集長として約10年にわたって、同誌の編集に従事。2014年4月に独立、オートインサイトを設立。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

日経ビジネスオンラインのトップページへ

記事のレビュー・コメント投稿機能は会員の方のみご利用いただけます

レビューを投稿する

この記事は参考になりましたか?
この記事をお薦めしますか?
読者レビューを見る

コメントを書く

ビジネストレンド

ビジネストレンド一覧

閉じる

いいねして最新記事をチェック

日経ビジネスオンライン

広告をスキップ

名言~日経ビジネス語録

トランプ政権のここまでの動きはスロー。

ジョセフ・ナイ 米ハーバード大学特別功労教授