• BPnet
  • ビジネス
  • IT
  • テクノロジー
  • 医療
  • 建設・不動産
  • TRENDY
  • WOMAN
  • ショッピング
  • 転職
  • ナショジオ
  • 日経電子版

木村利恵 「遺体じゃない、人なんだ」

エアハース・インターナショナル社長

2015年5月30日(土)

  • TalknoteTalknote
  • チャットワークチャットワーク
  • Facebook messengerFacebook messenger
  • PocketPocket
  • YammerYammer

※ 灰色文字になっているものは会員限定機能となります

無料会員登録

close

「国際霊柩送還」という耳慣れない仕事に従事する女性がいる。元は平凡な2児の母。葬儀で返礼品を配るアルバイトが彼女を変えた。「国境」と「生死」に引き裂かれた死者と遺族のために心血を注ぐ。

(写真=会田 法行)

 真っ青な日本の夏空をバックに、赤い垂直尾翼を携えたトルコ航空TK50便が滑走路に降り立った。イスタンブールを出発して11時間。山本美香は、12日ぶりに故郷に戻ってきた。

 狐野由久は、指定された到着時間の午前10時30分に成田空港第1ターミナル南ウイングで山本の帰りを待っていた。旧知の友が、異国で倒れたと聞いてから4日。いまだに信じられない気持ちだった。2012年8月20日、山本はシリアのアレッポで紛争の取材中に銃弾を受け、死亡した。享年45。イラク戦争など世界の紛争地を精力的に取材し、ボーン・上田記念国際記者賞特別賞を受賞したジャーナリストだ。

 日本テレビ放送網の外報部長である狐野は、仕事の発注を通じて山本と15年以上のつき合いがある。山本についての記者会見や搬送、葬儀についての一切を任されていた。山本の遺体が成田に到着した後、付き添うように空港を出発し、東京都杉並区の山本の自宅へと向かった。棺が開かれ、狐野はそこで初めて山本と無言の再会を果たす。「美香さんの変わり果てた姿はどこにもなかった。昔から薄化粧だった彼女が、その顔のまま美しく眠っていた」。

 この“美しさ”は、海外で亡くなった人すべてに保証されるものではない。何千kmと離れた外国から時間をかけて日本に戻ってくる間に、遺体の腐敗は進む。出発前に防腐処理は当然施すが、3万3000フィートの上空を飛ぶ飛行機内の気圧は0.8気圧。気圧の変化により、体内のガスが膨張し、体液や防腐液が体外に流れ出るケースもある。帰国便が直行便でないケースも多く、離着陸を繰り返すたび、時間は経過し、気圧の変化は繰り返され、腐敗は進む。それだけではない。海外と一言に言っても、地域の医療体制のレベルも違う。交通事故に遭った後何時間もその場に放置されてしまったり、幸運にもすぐに病院に運ばれたとしても防腐処理の技術が未熟だったりと、死後、遺体がどのように扱われたかによっても、帰国後の状態は大きく異なる。

 「お帰りなさい、よく戻ってきたね」。山本の遺体をシリアから戻し、生前と変わりない姿で狐野に再会させたのは、エアハース・インターナショナルの社長、木村利惠だ。

 「国際霊柩送還」。この耳慣れない言葉が、木村の生業だ。邦人が海外で亡くなるケースは、年間約500~600件(外務省調べ)。2003年に木村が立ち上げたエアハースは、このうち約半数近くを取り扱う。海外から戻ってくる邦人のみならず、日本で亡くなった外国人を故郷へ送り出すケースもある。

コメント0

「旗手たちのアリア」のバックナンバー

一覧

「木村利恵 「遺体じゃない、人なんだ」」の著者

染原 睦美

染原 睦美(そめはら・むつみ)

日経ビジネス記者

日経パソコン、日経ウーマンオンラインを経て、2013年4月から日経ビジネス記者。ネットサービス、人物ルポ、などが得意分野。趣味は洗濯、昼酒、ピクニック。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

日経ビジネスオンラインのトップページへ

記事のレビュー・コメント投稿機能は会員の方のみご利用いただけます

レビューを投稿する

この記事は参考になりましたか?
この記事をお薦めしますか?
読者レビューを見る

コメントを書く

コメント入力

コメント(0件)

ビジネストレンド

ビジネストレンド一覧

閉じる

いいねして最新記事をチェック

日経ビジネスオンライン

広告をスキップ

名言~日経ビジネス語録

誰もやらない領域を根気強く続けられるかが成功の秘訣。

田坂 正樹 ピーバンドットコム社長