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中国製造2025はカチョーとカカリチョー次第

わが家のトイレ・浴室工事で露呈した「段取り」と「状況判断」の悪さ

2015年6月4日(木)

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強引な工事に遭遇し、立ち退きを拒否して奮闘する中国市民らの気持ちを疑似体験できた気がした(上海・2007年)

 中国政府が2015年5月末、製造業の今後の指針を示す「中国製造2025」という計画を打ち出した。3つのステップを経て中国を現状の「製造大国」から2049年には総合力で世界トップの「製造強国」にしようというもの。「中国製造2025」は第1ステップである2025年までの10年計画で、「情報技術」「ロボット・工作機械」「航空宇宙」「海洋エンジニアリング」「先進鉄道設備」「省エネ・新エネルギー車」「電力設備」「農業機械」「新材料」「バイオ・医療機器」と重点的に発展させる10産業を指定。さらに、ITの活用や財政面での支援をすることで製造業全般で効率と水準の一段の引き上げを図ろうというものだ。

 上海では最低賃金が2005年の690元(約1万3800円)から2015年には2020元(約4万40円)と10年で3倍弱の上昇を見せた。人件費をはじめとするコストの高騰で、「世界の工場」と言われた中国の製造業がこれまでのような労働集約型による成長が限界に来ているのは間違いなく、効率や技術のレベルアップで事態の打開を図ろうとするのはよく分かる。そのために、ITを駆使したり、財政的に支援していこうとしたりするのももっともな話だ。

 ただ、中国の製造業が総合力の引き上げを図ろうというのであれば、ITの活用や財政支援に負けず劣らず重要だと思うことがある。それは、現場を取り仕切る「課長さん」「係長さん」のレベルアップだ。具体的には、彼らの「状況判断の適当さ」と、「段取りの悪さ」をいかに改善できるか、である。

 ちなみに中国語で「課長」「係長」と表記する肩書きはない。業種によって多少異なるが、課長は「経理」(マネジャー)、係長は「組長」といったところになる。中国を知る人の中には「経理は課長よりも偉いよ」と異論を唱える人もあろう。ただ、日本でも零細企業で肩書きは「専務」だが、仕事の内容は中小企業や大企業の「課長」レベルだというケースがたくさんある。ここで言う課長はそういう意味だと理解してほしい。

 最近、中国の現場の最前線ではこういう感じの課長さん、係長さんがブイブイ言わせてるのが現状なんだなあ、これで製造強国なんて大丈夫なのかなあと、いささか心配になる事態に遭遇した。正確に言えば製造業ではなく建築業でのことなのだが、業種は違えど課長、係長の果たす役割は同じなので、ここに紹介してみたい。なお、彼らのあまりの想定外の行動に、全編「カチョーさん」「カカリチョーさん」とカタカナで表記して揶揄したいところなのだが、くどく、長くなるので漢字を使うことにする。

降って湧いた水漏れ疑惑

 私の住んでいる上海の団地で今年の5月頭から大規模な補修工事が始まった。3階建ての集合住宅8棟に計100戸ほどが入居しているのだが、築90年で老朽化が進んでいる。このため安全確保を目的に、費用は上海市政府の全額負担で修繕をするのだという。工事の対象は公共部分だが、老朽化によるものだと認められれば、個々の家の修繕も政府負担でやってくれる。工事は入札方式で、落札したのは上海のある国有建設会社。連日、揃いの黄色いヘルメットを被り青い上っ張りを着た50人ほどの作業員が朝6時半からやってきて、竹で組んだ足場で屋根に上ったり、地面を掘り返して排水管を交換したりとにぎやかにやっている。ただ、わが家は特に不具合も無いので、工事が私の生活に直接、大きく影響することもないだろうと思っていた。

 ところがある土曜日の朝のこと。ヘルメットを被った男がわが家にやって来て、「お宅の真下の家が漏水で壁に染みができて困っている。お宅か、お宅のお隣さんの家の浴室トイレが原因だと思われる。明日検査して、問題が見つかれば、すぐさま修理にかかる。費用は政府が負担する」と言う。あなたは誰ですか? と尋ねると、「係長だ」という。係長に伴われて真下の家を見に行くと、確かに天井から壁に大きな染みがあり、湿っている。仮にウチが原因だった場合、どのような修理をして、時間はどのぐらいかかるのかと尋ねると、「便器を取り外し、床のタイルを剥がして、コンクリートの基礎打ちと防水をし直す。乾燥の時間も含めて、4日目の夜、すなわち水曜日の夜にはトイレもシャワーも使えるようになるよ」と言った。了解、では、明日は何時に来ますか?と聞くと、「先にお宅のお隣さんを検査するから、お宅は午後」と言い残して係長は引き揚げて行った。

 この家は自宅兼仕事場にしているので、4日間トイレと風呂無しは不便。しかもわが家の水場は浴室に1カ所だけなので、水自体が全く使えなくなる。ただ、万一漏水しているのなら仕方がない。頭の中の地図にホテル、地下鉄駅、公衆トイレなど徒歩圏内にあるトイレを思い浮かべ、まあ何とかなるな、人に会う予定も無いし、4日ぐらいならシャワーは浴びなくても、などと思いながら、明日からの仕事と生活の算段をし、大家に電話をかけ、これこれこういうワケで修理になるかもしれませんからと報告した。

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「中国製造2025はカチョーとカカリチョー次第」の著者

山田 泰司

山田 泰司(やまだ・やすじ)

著述業/EMSOne編集長

1992~2000年香港で邦字紙記者。2001年の上海在住後は、中国国営雑誌「美化生活」編集記者、月刊誌「CHAI」編集長などを経てフリーに。2010年からは、「EMSOne」編集長も務める。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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