なるほど、それなら会社と社員が同じ方向を向ける。この時もまた、社員家族に手紙を送っています。(※手紙全文を本記事の末尾に掲載)
中井戸:給料を担保しているのだから、効率的に働いたら自分の健康にもプラスになる。仕事のあり方を従業員が自分で考えてくれ、という動機付けをしたのが、大きなポイントや。
残業を減らせと言われたら、給料を抑えて販管費も減らしたいからかと。俺ら、大変なんだと、好きでやっとるのと違うねんというのが、まず人間、頭に浮かぶことなんですよ。だから、そこまで触れてやらないと、本当に自分たちの健康のことも考えてくれているんだという気持ちにはならないでしょう。
そうしたら部長も、課長も、リーダーも、チームも自分で考えるよ。『今までのようなやり方でやっていたら、あるチーム員が失敗したら、全員がみんなまた元へと戻ってやり直しやと。それよりこうやった方がいい』と。こういうことを自ら考えさせる。経営者はそんな(現場の)ことまでは分からないんだから。いい方に回転しだしたら、みんな自己増殖していく。
そうしたら、案外やれるやないかと。早く帰って寝られるから体も楽や。お子さんが起きている顔を見て相手ができる。なかなかいいじゃないか、ということにみんなが気付き始めた。
会社というのは、10億円とか15億円とか残業削減で浮いて、営業利益に上積みしたらものすごく助かるのや。でもそれはしない。皆さんの健康の原資だから、信じられないかもしれないけど、それは皆さんに戻す。残業しなくても残業代を払うから、心配しないで効率を考えてくれ、健康を考えてくれと。健康を害されたらもうどうしようもない。
(残業が減ったら)いろんな統計が良くなってきて、メンタルの問題も減ってきた。ありがたいことに、みんなが頑張って増収、増益、増配ができた。経営者としても驚くほどの成果や。やっぱり従業員が自らの勤務や業務、時間管理のあり方、すなわち効率的な業務のこなし方をしようという気持ちにさせない限り、本質的に残業なんて減らない。これは、もうあまねくどこの産業もそうだと僕は思う。
日本のIT産業全体が人月商売である限り、一部の企業だけよくなっても必ず他へしわ寄せが行くだけという点が悲しいですね。(2015/06/19 09:03)