• BPnet
  • ビジネス
  • IT
  • テクノロジー
  • 医療
  • 建設・不動産
  • TRENDY
  • WOMAN
  • ショッピング
  • 転職
  • ナショジオ
  • 日経電子版

「病院とは生きること、死ぬことと向き合う人生の道場」

福岡県の栄光病院が介護事業に乗り出した理由

2015年6月10日(水)

  • TalknoteTalknote
  • チャットワークチャットワーク
  • Facebook messengerFacebook messenger
  • PocketPocket
  • YammerYammer

※ 灰色文字になっているものは会員限定機能となります

無料会員登録

close

福岡県の社会医療法人、栄光会では178床のうち71床をホスピス(終末ケア施設)が占める。毎月数十人の患者が最期を迎える現場で医師は何を思うのか。地域の医療を支えるため、病院の経営改革にも乗り出した。

 「先月はうちの病院で47人が亡くなりました」

 その医師は穏やかな表情で言った。

栄光病院理事長の下稲葉康之氏

 社会医療法人、栄光会は178床のうち71床をホスピス(終末ケア施設)に割り当てている。その栄光病院(福岡県志免町)では毎月、40人前後が人生の最期を迎える。

 栄光病院は1980年、現理事長の下稲葉康之氏ら3人のクリスチャン医師で設立した。「人生の最期を『ありがとう』と言って閉じられるような医療」(下稲葉氏)を目指している。

 あるとき、下稲葉氏の大学の後輩に当たる41歳の医師がホスピスに入院してきた。がんに侵され、ありとあらゆる治療を試みたが回復せず、余命幾ばくもない状態だった。

 ある日、下稲葉氏が病室を訪れると、彼は車いすに座り、憔悴しきった表情で虚空をにらんでいた。

 「どうしたの」

 「……」

 「どうしてほしい。何が欲しい…」

 下稲葉氏が問うと、彼はぽつりと言った。

 「いのち」

 下稲葉氏は振り返る。

 「彼は医者ですからね。自分がどういう状態にあるかよく分かっていました。彼の言った『いのち』とは、生物としての命ではないですね。死ぬべき自分を支える『いのち』です。しばらく重い沈黙が続いた後、私はキリストが十字架の上で死んでから3日後に復活した話をしました。すると彼の表情が穏やかになった。数日後の結婚記念日には6歳の娘さんが作ってくれた指輪をして、嬉しそうでした。病院とは生きること、死ぬことと向き合う人生の道場です」

 こうした理念を実現すべく、栄光会は2006年に新しい病棟を立て、旧病棟の跡地に介護施設を作った。33億円を借り入れ、最初の年は1億円の赤字になった。下稲葉氏は定期的に部門別ミーティングを開いて、現場の意識改革を訴えた。

コメント0

「日野原・稲盛 魂の提言 日本の医療を救え」のバックナンバー

一覧

「「病院とは生きること、死ぬことと向き合う人生の道場」」の著者

大西 康之

大西 康之(おおにし・やすゆき)

ジャーナリスト

日本経済新聞産業部記者、欧州総局(ロンドン)、日経ビジネス編集委員、日本経済新聞産業部次長、産業部編集員などを経てフリーのジャーナリストに。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

日経ビジネスオンラインのトップページへ

記事のレビュー・コメント投稿機能は会員の方のみご利用いただけます

レビューを投稿する

この記事は参考になりましたか?
この記事をお薦めしますか?
読者レビューを見る

コメントを書く

コメント入力

コメント(0件)

ビジネストレンド

ビジネストレンド一覧

閉じる

いいねして最新記事をチェック