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【第1回】呉服屋「伊勢由」4代目 千谷美恵さん【後編】

呉服屋のビジネスは
顧客や職人とのつき合いがポイント

  • 白河桃子

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2006年10月24日(火)

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呉服屋「伊勢由」常務取締役 千谷美恵さん(写真:稲垣 純也、以下同)
呉服屋「伊勢由」常務取締役 千谷美恵さん(写真:稲垣 純也、以下同)

 前編に引き続き、銀座の呉服屋「伊勢由」4代目の千谷美恵さんにお話を伺う。

 老舗の呉服屋というと、「敷居が高い」と思う人も多いかもしれない。しかし千谷さんは、「老舗だから何か買わされそうだと臆せず、どんどん店に入ってきてほしい」と言う。一つの老舗と長くつき合えば、最初はこの着物、次はこの帯と、予算に合わせて購入することもできる。もちろん「こんな柄がいい」というオーダーメードもできる。伊勢由は多くの職人さんとつき合っており、千谷さんはプロデューサー的な役割も担っている。

 着物の世界は、職人とのつき合いもなかなか大変だ。「着物作りの職人さんも、ほとんど男性です。女性の立場から提案しても『そんなに細かいことを言うなら、俺はつくらないよと』言われてしまうこともあるんです(笑)」と千谷さん。

 ある時千谷さんは、「太っている人が帯を締めると、帯の柄がきちんと出ない(注1)」ということに気づいた。そこで、柄の位置を変えてほしいと職人に提案したが、新参者の千谷さんの意見がなかなか通らない。「昔からこの位置と決まっているのだから、だめ」と言われてしまう。「とにかくつくってほしいんです」と粘って、やっと納得してもらったこともある。

 「時には、お客様の気持ちと職人さんの気持ちの間で板挟みになります。職人さんにはプロ意識があり、お金では動きません。それでも、その技術を持っているのはその人しかいない、どうにかその職人さんに、お客様の要望通りのものをつくってもらわないといけない…。何社かに見積もりを取って安い方に発注する、というビジネスの常識が通用しないんです」

 職人と上手につき合うには、一人ひとりの職人の技術や性格を把握する必要がある。「この人に植物の柄を描いてもらったら天下一品」とか「この人は幾何学模様が得意」といったことを、失敗を通じて学んでいく。どの職人にどんなオーダーをすれば素晴らしい作品が生まれるのか、学習していくのだ。

 職人とのつき合いを通して、染めのオリジナルスカーフなど新しい商品も企画した。「洋服屋で素敵なスカーフを見つけると、その作者を探して本人と交渉し、着物の図案で染めてほしいとお願いしたこともありました。着物を着る人のマーケットだけでは、パイが小さすぎる。洋服にも合うような和小物を考えてつくり、少しでも多くの人が“和”の世界に近づいてくれればと思っています」

 伊勢由はもともと「ふくふく袋」(風呂敷代わりに使える、伊勢由オリジナルの軽くて丈夫なサブバッグ)「ワンポイント付きの足袋」など、かわいらしい柄のオリジナル小物が人気の店だ。こういったオリジナル小物を強化するのも、着物産業全体が先細っていくという時代背景があるためだ。呉服の売れない時代に、新しいことに挑戦する娘を、父親はどう感じているのか?

「割と自由にさせてもらっています。男の跡取りの場合、最初から自分が継ぐと思っているし、回りも『若旦那』という目で見る。父親としても『まだ息子には任せられない』と意地を張ったり、葛藤があるようです。男に対しては、代々いる番頭さんたちの目も厳しい。でも私の場合は女であるせいか、『跡取りが突き当たる葛藤』を免れている面もありますね」

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