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第6回 オカン男子

母親が誰よりも大好きな彼らは「大人」になれるか?

  • 深澤 真紀

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2006年10月20日(金)

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リリー・フランキー『東京タワー』に見る「オカン男子」の誕生

 200万部を達成した、リリー・フランキー氏の大ベストセラー『東京タワー――オカンとボクと、時々、オトン』。

 「ボクが一番恐れている事は親が死ぬこと」というリリー氏が、母親(オカン)と自分が過ごした日々を描き、多くの「親好き」が泣いた私小説です。

 ドラマ化(主人公は母親好きを公言する大泉洋)や、映画化(こちらはオダギリジョー)も決まっており、まだまだブームも続きそうです。

 U35世代より年上(1963年生まれ)のリリー氏。

 彼が『東京タワー』で描いたのは、多くの女性が嫌う「マザコン」ではありません。

 「マザコン」というのは、多くの男性にとって言われたくない言葉の1つでしょう。

 実際にはマザコンであっても「それだけは思われたくない」と思いながら、それを隠している人が多かったのです。

 リリー氏も「マザコン」だと思われることに抵抗を感じて、本書を書くまでに少し時間がかかったといいます。

 彼が本書を書けたのは、「マザコンじゃなくて、母親を好きなだけなんだ! どこが悪いんだ!」という時代の空気を感じたからなのかもしれません。

 近年、日本の母親は、イタリアの「マンマ」のような存在になっています。

 イタリアでは、母親が家庭の中心にいて、マンマは太陽、マンマ至上主義です。

 今や、日本でも、「ウチの中心はお母さん」と、父親も子どもも口を揃えて言います。

 そして、「日本のイタリア」であり、もともと母親の存在が強かった関西や九州(リリー氏は九州出身)で使われてきた、母親の呼び名「オカン」が全国に広がってきました。

 今や「母親を好きでいること」は隠すことではありません。

 「マザコン」というネガティブイメージではなく、母親を大好きな「オカン男子」は今や、日本中に生息しています。

この世でオカンが一番の存在

 豊かな時代になり、親からあまり厳しいことも言われず、親に抵抗したり、親を否定するような時期もほとんどなく過ごした男の子たちが「オカン男子」です。

 「ニューファミリー」や「友達親子」という言葉がありましたが、これはまさに「オカン男子」の生まれた背景と言えるでしょう。

 彼らは、まず「オカンありき」。オカンが一番の存在です。

 オカン男子にとって、母親は、人生経験が豊富で、話が面白くて、お金もある友達とも言えます。

 そして何よりも「絶対に自分を好きでいてくれる」「何があっても守ってくれる」「絶対に裏切らない究極の味方」という存在です。

 「自分好き」で、「自分を好きな人が好き」な彼らにとって、これ以上の存在はないでしょう。

 だからリリー氏が書くように彼らは「親が死ぬことが一番怖い」のです。

 母親も、いつまでも若いつもりでいるので、息子と仲がいいことが自慢です。

 そして、何より母親にとって息子は「永遠の恋人」。

 息子と過ごしている限り、「永遠の青春」なのかもしれません。

彼女も友達もオカンと一緒に――オカン男子の生態

 「オカン男子」は、オカンに、恋愛のこと、学校のこと、仕事のこと、なんでも相談します。

 オカンも恋愛相談をされれば、「AちゃんよりもBちゃんの方がアンタに合ってると思う」などとアドバイスをして、息子は「そうだな」と素直に従ったりします。

 オカン男子は、オカンと合わない女の子とつき合いたいとは決して思いません。

 また、「オカン男子」の間では「自宅同棲」が大変に増えています。

 男子の自宅に彼女が自然に居ついて、オカンにご飯を作ってもらい、掃除洗濯もしてもらいながら、一緒に暮らすのです。

 昔は、男子が彼女を自宅に連れ込むというのは、親が留守の時こっそりするものでしたが、今は「彼女がオカンと合うかどうか」が大切なので、つき合う前から女友達を家に連れてきて、品定めしてもらったりします。

 彼女は家族の一員として迎え入れられるような子じゃなければいけないのです。

 双方の親も、「隠れてラブホテルに泊まったり、プチ家出されるよりは、家にいてくれた方が、ちゃんとしたごはんも食べさせられるし、いいんじゃない?」くらいの感覚です。

 悪い友達とつるむようになったり、悪い遊びを覚えたりすることもないから断然安心というわけです。

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