「野々村人事部長の歳時記」

スキルだけではリーダーにはなれません〜「HOW」よりも「WHAT」をつくる3つの視点

野々村さん、自動車メーカーの人材開発センター長を訪ねる

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2007年4月9日(月)

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 前回に続き、今、人事部長たちが研修制度に対して抱いている問題意識を紹介する。野々村さんをはじめ企業の人事担当者たちが漠然と感じているのが「最近の企業研修がスキル習得に偏り過ぎてないだろうか?」ということ。

 人事担当者の代弁者、野々村さんはこう語る。

 「会社に成果主義が導入されてから、会社ばかりではなく社員も自分の携わる仕事の生産性を上げることを気にするようになってきた。だから、スキルの習得への関心が高まっている。これはこれで良い面もある。だからこそ、我々もそうしたスキル研修のプログラムを用意してきた。でも、その一方で、実務に必要なスキルばかり力を入れていていいのか、という疑問もある。社員全員が実務的な能力ばかり伸ばしていてもね、このまま激しい変化に耐えられる組織であり続けられるのか・・・」

野々村さん、自動車メーカーを訪ねる

 野々村部長は某大手自動車メーカーA社を訪ねた。A社の人材開発センター長上田さんとは以前、人事担当者の懇談会で知り合いになった。同社の取り組みや上田さんの意見を聞いてみたいと思ったのだ。

野々村部長: 「今日は企業の人材育成のあり方について、率直なご意見を伺いたいと思っています。私どもの会社では、一般社員の教育は自主性を重んじて様々なスキル研修を用意してます。スキル習得は業務達成のために重要なので、今年はこれまでの反省に立って中身を見直していく予定です。ただ、人を育てるにあたりスキル習得以外にどんな取り組みが必要かヒントをいただきたいと思いまして・・・」

一部の幹部だけを育てるだけでは対応できない

上田・人材開発センター長: 「やることは山ほどあると思いますが、うちではリーダーシップ教育に力を入れています。幹部だけではなく、組織のあらゆる層でリーダーを育てるためです。一握りの人だけがリーダーシップを発揮しても組織全体を動かすのは難しい。変化の激しい時代ですから、お客様をはじめとする様々な関係者の要望や変化に素早く対応しなくてはいけない。そうすると、やはりあらゆる層の人に、自分自身で考え実行できるリーダーシップと能力を身につけてもらう必要がある」

野々村部長: 「うちでも自主、自立を掲げています」

 野々村部長もすこし安心したように言った。

上田人材開発センター長: 「そう、自主や自立は大切です。ただ、本当の意味での自主・自立というのは専門知識やスキル、つまり『HOW』を身につけるだけではムリなんです。やはり『WHAT』を明確にできるようになること。リーダーシップの出発点は、何をしたらいいかを明確にする力です。自分たちはどうありたいのか、その達成のために何をすべきか、を自分で考えて部下にきちんと伝えていくことが、リーダーの一番大切な役割です。人や組織が動く方向や動機を与えるものです。WHATは経営者だけがつくるもの、現場の自分たちは運営のスキル、HOWを身につけていればいいという意識では、管理職は務まらないですね」

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著者プロフィール

野々村人事部長

野々村人事部長

年齢は48歳。
大学卒業後、電機メーカーに入社。営業の仕事に従事し、10年目に人事部へ異動。採用から研修、人事考課の取りまとめまで、3年でひととおり人事の実務を経験した。人事部在籍4年目の人事課主任の時に、中堅の半導体用機械メーカーに転職し、採用マネジャー、教育研修マネジャー、人事課長と、人事畑で着実に経験を積む。人事部部長代理になって2年目の43歳の秋、大学時代のラクビー部の先輩で、中堅の流通チェーン・マルコーの2代目社長・大黒氏から乞われて、人事部長に。現在は、同社で人事・教育全般の統括と、組織風土改革プロジェクトの事務局長を務めている。

永禮 弘之(ながれ ひろゆき)

永禮 弘之

株式会社エレクセ・パートナーズ代表取締役
これまで、化学会社の経営企画、外資系コンサルティング会社のコンサルタント、衛星放送会社の経営企画部長・事業開発部長、組織変革コンサルティング会社の取締役などを経て現在に至る。建設、化学、医薬品、食品、自動車、電機、情報通信、小売、外食、ホテル、教育出版、文具など幅広い業界の企業に対して、7000人以上の経営幹部、若手リーダーの育成を支援。ASTD(アメリカに本部がある、世界最大の人材開発・組織開発の非営利団体)日本支部理事、リーダーシップ開発委員会委員長。

著書・雑誌寄稿:『強い会社は社員が偉い』日経BP社、『問題発見力と解決力』日経ビジネス人文庫(共著)、『グループ経営の実際』日本経済新聞社(共著)、『日経ビジネスオンライン』連載「野々村人事部長の歳時記」、『日経ビジネスアソシエ』連載「MBA講座」、最近の著書に『強い会社は社員が偉い 社員様第一経営のススメ』(NB Online book)がある。

 



このコラムについて

野々村人事部長の歳時記

昨今、日本企業に取り入れられている人材育成や人事の仕組みや考え方について、研修やコンサルティングをする中で、我々が聞いてきた疑問の声を取り上げながら、人事のあるべき姿について皆さんと考えていく。

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