前回に続き、今、人事部長たちが研修制度に対して抱いている問題意識を紹介する。野々村さんをはじめ企業の人事担当者たちが漠然と感じているのが「最近の企業研修がスキル習得に偏り過ぎてないだろうか?」ということ。
人事担当者の代弁者、野々村さんはこう語る。
「会社に成果主義が導入されてから、会社ばかりではなく社員も自分の携わる仕事の生産性を上げることを気にするようになってきた。だから、スキルの習得への関心が高まっている。これはこれで良い面もある。だからこそ、我々もそうしたスキル研修のプログラムを用意してきた。でも、その一方で、実務に必要なスキルばかり力を入れていていいのか、という疑問もある。社員全員が実務的な能力ばかり伸ばしていてもね、このまま激しい変化に耐えられる組織であり続けられるのか・・・」
野々村さん、自動車メーカーを訪ねる
野々村部長は某大手自動車メーカーA社を訪ねた。A社の人材開発センター長上田さんとは以前、人事担当者の懇談会で知り合いになった。同社の取り組みや上田さんの意見を聞いてみたいと思ったのだ。
野々村部長: 「今日は企業の人材育成のあり方について、率直なご意見を伺いたいと思っています。私どもの会社では、一般社員の教育は自主性を重んじて様々なスキル研修を用意してます。スキル習得は業務達成のために重要なので、今年はこれまでの反省に立って中身を見直していく予定です。ただ、人を育てるにあたりスキル習得以外にどんな取り組みが必要かヒントをいただきたいと思いまして・・・」
一部の幹部だけを育てるだけでは対応できない
上田・人材開発センター長: 「やることは山ほどあると思いますが、うちではリーダーシップ教育に力を入れています。幹部だけではなく、組織のあらゆる層でリーダーを育てるためです。一握りの人だけがリーダーシップを発揮しても組織全体を動かすのは難しい。変化の激しい時代ですから、お客様をはじめとする様々な関係者の要望や変化に素早く対応しなくてはいけない。そうすると、やはりあらゆる層の人に、自分自身で考え実行できるリーダーシップと能力を身につけてもらう必要がある」
野々村部長: 「うちでも自主、自立を掲げています」
野々村部長もすこし安心したように言った。
上田人材開発センター長: 「そう、自主や自立は大切です。ただ、本当の意味での自主・自立というのは専門知識やスキル、つまり『HOW』を身につけるだけではムリなんです。やはり『WHAT』を明確にできるようになること。リーダーシップの出発点は、何をしたらいいかを明確にする力です。自分たちはどうありたいのか、その達成のために何をすべきか、を自分で考えて部下にきちんと伝えていくことが、リーダーの一番大切な役割です。人や組織が動く方向や動機を与えるものです。WHATは経営者だけがつくるもの、現場の自分たちは運営のスキル、HOWを身につけていればいいという意識では、管理職は務まらないですね」
ここから先は「日経ビジネスオンライン」の会員の方(登録は無料)、「日経ビジネス購読者限定サービス」の会員の方のみ、ご利用いただけます。ご登録のうえ、「ログイン」状態にしてご利用ください。登録(無料)やログインの方法は次ページをご覧ください。




からのご案内




